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28歳・がん余命半年から生還 生きる勇気が湧く等身大の闘病記『命はそんなにやわじゃない』

inochiyawa.jpg『命はそんなにやわじゃない』
(かんき出版)

 日本人の死因は依然としてがんが第1位にある。2005年に新たに診断されたがんは67万
6,075例、09年にがんで死亡した人は34万4,105例(独立行政法人国立がん研究センター調べ)であり、医療技術が進歩した現在も不治の病であることに相違ない。さらにがん患者は年々増加傾向にあり、若年化も進んでいるという。

 20代後半~30代前半、筆者の周りでも幾人もの人ががんを患い、亡くなっている。がん患者の本音――心のうちとは一体どのようなものなのだろうか。『命はそんなにやわじゃやない』(かんき出版)は、命のマガジン「メッセンジャー」編集長で、シンガーソングライターの杉浦貴之氏が、自身の闘病体験を綴った自伝だ。杉浦氏は99年、28歳の時にがんを患った。余命半年と告げられた直後から、入院生活、退院してからのがん治療遍歴、仕事の悩み、”夢”を見つけるまでの心の動きを細やかに記しており、がんになるまでの前半生の回想や、自作の歌詞も交え、巷によくある”闘病もの”とは一線を画した内容となっている。また、各章末に「元気なるコツ」「元気になるのを遅らせたこと」が箇条書きでまとめてあり、わかりやすく要点を把握できる。

 とはいえ、杉浦氏の闘病は決して順風満帆だったわけではない。腫瘍摘出後も、抗がん剤の副作用に苦しみ、ひどい腸閉塞にたびたび襲われ、わらにもすがる思いで、各地の医師や療養施設を訪ね歩き、マクロビオティックや瞑想、ヒーリングなど、手当たりしだい手をつけ、スピリチュアルにはまってスコットランドのパワースポットまで訪れたこともある。そんな中、元NHKのディレクターで、がん克服の講演会を開いている川竹文夫氏の「あなたは自分でがんを作った」という言葉を聞いて、杉浦氏は自身の心の中に深く潜っていくようになる。仕事も辞め、宮崎での一人暮らしやNPOの代表などを経て、がんで苦しむ人のための雑誌、命のマガジン「メッセンジャー」を創刊。さらに05年、病院のベッドで思い描いていた「ホノルルマラソン出場」という夢まで叶えてしまうから、そのヒューマンパワーたるや、すさまじいもの。

「『命はそんなにやわじゃない』命は儚く、儚く、脆い。しかし、命はしぶとく、強く、逞しい。どちらにも揺れる命だけど、ぼくはぼくの体験から、『命の可能性』を伝えていく。(中略)ぼくは命の使い道を見つけたのだ。がんに苦しみ、腸閉塞に5度も見舞われ、たくさんの挫折を味わいながらたどり着いたこの道こそ、自分が歩むべき道だった。そして振り返り、足跡を眺めると、何一つ無駄なことはなかったことに気づいた」(本文より)

「過去の出来事すべてが宝物」と杉浦氏は語っている。僕らは過去に対してこのように思えるだろうか。病床にあった人の言葉は率直で、真摯で、力強い。この本はがん闘病記であり、病を克服した青年の成長物語でもある。もし、身近に病で苦しんでいる人がいたら、この本を見舞いに携えてはいかがだろうか。僕らの千のなぐさめの言葉より、きっとその人の励みとなり、生きる勇気を与えてくれることだろう。
(文=平野遼)

●すぎうら・たかゆき
1971年生まれ。愛知県西尾市出身、岡崎市在住。命のマガジン「メッセンジャー」編集長、シンガーソングライター。
<http://www.taka-messenger.com>

命はそんなにやわじゃない

やわじゃない。

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最終更新:2013/09/09 15:35
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