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単なる懐古に終わらない! 新しい魅力溢れるモノクロ無声映画『アーティスト』

m0000000679.jpg(C)La Petite Reine – Studio 37 – La Classe Americaine –
JD Prod – France 3 Cinema- Jouror Productions – uFilm

 派手なアクションや最先端の視覚効果に興奮したり、斬新なトリックや凝った筋書きに驚愕したりするのも、もちろんオーケー。それでもやはり、俳優たちの素晴らしい演技を味わい、彼らが織りなす物語世界に心動かされることこそ、映画の楽しみ方の基本であり王道なのだと改めて教えてくれる、注目の新作2本を紹介したい。

 4月7日公開の『アーティスト』は、今どきモノクロの無声映画の新作ということでまず意表を突き、さらに今年の第84回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞ほか5冠を獲得して世界を2度驚嘆させたフランス製のメロドラマ。サイレント映画が全盛期を迎えていた1920年代のハリウッドで、スター俳優のジョージ(ジャン・デュジャルダン)は新人女優のペピー(ベレニス・ベジョ)と出会い、彼女をスターへと導く。折しも映画業界がサイレントからトーキーへと移行するなか、ジョージが落ちぶれていく一方、ペピーはトーキー映画の新進スターとして人気を確立。ジョージの没落に心を痛めるペピーは、彼の再起を願って秘かに奔走する。

 セリフを発することなく顔の表情と身体の動きですべてを表現しなければならない難役を、デュジャルダンとベジョが繊細かつ優雅に、時には大胆にまたユーモラスに熱演。レトロな雰囲気のなか繰り広げられる成功と挫折と切ない恋の物語を、過去の名作へのオマージュを込めた音楽が盛り上げる。モノクロ&サイレントとはいえ、ごく一部で色や環境音・セリフが効果的に加えられたシーンがあり、単なる懐古に終わらせず新しい魅力を創造したい、というミシェル・アザナヴィシウス監督の意気込みが伝わってくる。無声映画や白黒作品を愛するマニアや年配者はもちろん、カラー作品しか見たことがないという比較的若い世代にも新たな発見をもたらしてくれる娯楽作だ。

 もう1本の『キリング・フィールズ 失踪地帯』(4月14日公開)は、米テキサスシティ郊外に実在する犯罪多発地帯を題材にしたクライムサスペンス。血気盛んでトラブルの絶えない刑事マイクと、ニューヨークから転属してきた穏やかで冷静な相棒ブライアンは、連続して発生した少女の失踪と殺人事件の捜査にあたる。なかなか手がかりがつかめず、ようやく容疑者が浮かび上がったころ、ブライアンが気にかけていた傷心の少女アンも失踪。アンが事件に巻き込まれたと直感した2人は、「キリング・フィールド(殺人地帯)」と呼ばれ恐れられる一帯に足を踏み入れる。

 『ヒート』(1995年)、『コラテラル』(2004年)、『マイアミ・バイス』(06年)といった犯罪物や刑事物の監督で知られるマイケル・マンが製作を受け持ち、実の娘であるアミ・カナーン・マンが商業映画の長編監督としてデビューを飾った。マイク役には、『アバター』(09年)、『タイタンの戦い』(10年)など超人的なヒーローの役どころが記憶に新しいサム・ワーシントン。アン役には、『キック・アス』『モールス』(共に10年)でエキセントリックな少女を演じてきたクロエ・グレース・モレッツ。2人とも、過去の代表作ではなかなか見られなかった“現代の普通の人”のキャラクターを、生々しく切実に演じている。もう1人の刑事に扮するジェフリー・ディーン・モーガンや、『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(公開中)で今年のアカデミー助演女優賞にノミネートされたジェシカ・チャステインも含め、演技派のキャストたちのアンサンブルを堪能できる佳作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

「アーティスト」作品情報
<http://eiga.com/movie/57525/>

「キリング・フィールズ 失踪地帯」作品情報
<http://eiga.com/movie/57592/>

Artist

サントラもチェケラ!

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最終更新:2013/09/19 17:58
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