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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.172

実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開!

内藤 「“先生を流産させる会”は実際にあった事件。この言葉に、いちばんの衝撃を受けたんです。こういう悪意の在り方は自分には想像しえなかった。流産させても殺人罪にはならない。でも、“先生を殺す会”よりも“先生を流産させる会”という言葉のほうが、遥かにまがまがしく、おぞましい。それはなぜなんだろう。そう思ったことが企画の始まりでした」

 タイトルありき、で成立した映画というわけだ。続くコメントも奮っていた。

ryuuzan_03.jpg妊娠4か月のサワコ先生(宮田亜紀)。
「先生である前に、私は女なのよ」と、いた
ずらを繰り返す会のメンバーへ宣戦布告する。

内藤 「自主映画は観てもらえる機会がとても少なく、映画祭のコンペに残って上映されるぐらいしかない。(前作にあたる)ホラー映画『牛乳王子』(08)を映画祭のコンペに出したけど、落ち続けました。そういったところで評価されているのは青春映画や恋愛映画。監督自身の小さな悩みを小さく描いた小さな話。そういった映画がうけるんだと分かった。でも、自分には、それはつまらなく思えたんです。じゃあ、自分はホラー映画を撮って、人知れず消えてしまうだけなのかなと。そこで、人に届くにはどうすればいいかと考え、実在の事件をテーマにすることを思い付きました。それは“他者を知ること”だと思ったんです。自分の中にはない題材を描こう。そうすることで大きく、外へ広がっていくものが撮れるんじゃないかと。また、実在の事件を扱うことで、自主映画に興味がない人にも振り向いてもらえるのではないかという意識もありました」

 本作が映画初出演となる小林香織(1999年生まれ)が演じる“先生を流産させる会”の中心メンバー・ミヅキのギラギラした眼差しが、残像のように観た者の記憶に焼き付く。自分が大人の女になることを全力で否定する、猛烈なパワーがみなぎっている。偽善者のマスクを被った大人たちや、そういう大人に平然となろうとする同級生たちを糾弾するかのような怒りの光線を発している。だが、やがて会のメンバーはひとり、ふたりと脱落していき、孤立したミヅキはより過激に先鋭化していくしかない。映画のクライマックス、担任のサワコ先生(宮田亜紀)は廃墟化した郊外のラブホテルでミヅキと対峙する。妊娠4か月の女教師はこう叫ぶ。「女は気持ち悪い生き物なのよ! あんたも気づいているんでしょ!?」

 女教師の叫びは、果たしてミヅキに届くだろうか。そして、映画を観ずにバッシングする人たちにまで届くだろうか。
(文=長野辰次)

ryuuzan_04.jpg
『先生を流産させる会』
製作・監督・脚本/内藤瑛亮 出演/宮田亜紀、小林香織、高良弥夢、竹森菜々瀬、相場涼乃、室賀砂和希、大沼百合子 配給/SPOTTED PRODUTIONS 5月26日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショーほか全国順次公開 <http://sensei-rsk.com>
(c)2011内藤組

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