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年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』

kibounosig3.jpg仙台で自死遺族の自助グループ「藍の会」を
立ち上げた田中幸子さん。遺族との茶話会や
ランチ会を開いている。

 本作を企画・製作したのは1982年生まれ、岩手県北上市在住の双子の兄弟、都鳥(とどり)伸也・拓也。兄・拓也が撮影&編集を担当、弟・伸也が監督を務めた。日本映画学校時代の同期生にSONYの旧式カメラPD-150を借りて、本作を撮り上げた。製作費ゼロからのスタートだったが、サポーターズ・クラブという形で撮影取材と同時進行で製作費を募り、完成に漕ぎ着いた。岩手県のお隣・秋田県の自殺対策が、民間のネットワークだけでなく行政や医師会などを巻き込む形で変革期を迎えつつあることを映像として記録しようという想いで、アルバイトをしながら二人三脚で撮影を続けた。正直なところ、映像としては平板で、作品の構成にも斬新さはない。でも、映像的なテクニックに頼らない愚直さが、本作においては非常に効果的だったように思う。エンディングロールでは、協力者のクレジットが延々と流れる。本作の主旨に賛同し、製作費をカンパしたサポーターズ・クラブの人たちの名前だ。

 マスコミ向け試写の際に都鳥監督が夜行バスに乗って上京して挨拶をし、新聞などのインタビューに答えたりした他は、本作の目立った宣伝活動は都内では行なわれていない。公開規模もこぢんまりとしており、公開終了後にDVDとして一般販売やレンタルされる予定はない。本作の上映を目にする人は、かなり限られることになるだろう。もちろん、多くの人に観てもらいたいし、本作で紹介された取り組みが他の地域でも広がるきっかけになればいいと思う。でも、いちばん肝心なのは、秋田や仙台や岩手に自殺者がひとりでも減ることに努めている人たちがいるという事実。たとえ、あなたが今いる場所からそこが遠く離れていても、あなたが死んだら悲しむ人がいるということ。あなたが死ぬのを考え直したら、喜んでくれる人がいるということ。この映画は生きづらい社会の夜空に打ち上げられた、小さな小さなシグナルなのだ。
(文=長野辰次)

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『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』
監督/都鳥伸哉 撮影・編集/都鳥拓也 
配給/ロングラン映像メディア事業部 6月16日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開 
※6月16日(土)は都鳥兄弟による初日舞台挨拶、17日(日)は清水康之氏(自殺対策支援センター ライフリンク)と都鳥監督とのトークなどポレポレ東中野にて毎週土曜と日曜にトークイベントを開催 <http://ksignal-cinema.main.jp>
(c)『希望のシグナル』サポーターズ・クラブ/ロングラン映像メディア事業部

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