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家元・立川談志が落語界に遺したものとは? 『立川流騒動記』立川談之助インタビュー

■立川談志の教え

──立川流創設後、立川志の輔、談春、志らく、談笑と売れっ子を多く輩出した談志師匠ですが、独立した後、何か教えに変化があったんでしょうか?

談之助 特にはないですね。というよりも、昔から談志は弟子に何も教えていません。ですが、志の輔以降、変わったことといえば、多くの弟子がセルフプロデュースを意識しだしたという点でしょうね。志の輔は28歳の入門で奥さんもいたから、落語の実力以上にセルフプロデュース力を高めるための努力をしていました。談春にしても、志らくにしても、志の輔の背中を見て育っているので、努力の方向性がセルフプロデュースのほうに向かっていたんです。でも、実はその努力の方向性はうちの師匠も同じ考えだったんですね。だから師匠はよく言っていましたよ、『おまえら、真打ちになりてえなら、アイドルと結婚するか、刑務所へ1年間行ってこい。すぐに真打ちにしてやる』とか(笑)。

──談志師匠は立川流創設後、セルフプロデュースのほか、「唄・踊り・落語」ができることが条件だと言っていましたが、それはなぜでしょうか?

談之助 世間から師匠は「唄・踊り・落語」を条件に昇進を決める、芸に厳しい師匠といわれていましたが、実は違うんです。「唄・踊り・落語」というのはセルフプロデュースのできない弟子へ課した最低条件なんですね。自分の名前も売れない、スキャンダルも起こせない落語家なら、せめてそのくらいやれば飢え死にしないだろうという最低の条件。それが「唄・踊り・落語」なんです。今でいえば、生活保護のようなものです(笑)。現に、談春や志らくは、唄も踊りも何もできないですから。

──確かにセルフプロデュースでいえば、談志師匠はズバ抜けたものがありましたね。

談之助 あれは「すごい」と、弟子から見ても思いますよ。師匠が志の輔に対してよく言っていたのは「NHKのレギュラーで名前が売れる奴は、ただの一流。だが、超一流ならばNHKのレギュラーすらすっぽかす」とか。そんなもん、うちの師匠しかできないですよ(笑)。

■立川談志の都市伝説

──昔、何かの本で「談志師匠はインターネットに興味がある」と読んだ気がするのですが、これは本当ですか?

談之助 これはウソです。うちの師匠はまったくと言っていいほど、デジタルがわからない人ですから。ウワサによると、電球すら換えられない(笑)。でも、パソコンは持ってましたよ。昔、SMAPの香取慎吾君と共演したパソコンのCMでプレゼントされたものが、自宅にありました。でも、師匠には一回も触れられずにほこりをかぶっていて、師匠の息子さんがそれでネットゲームをしてました。でも一回、師匠から「メールをやりたい」と相談を受けたことがあります。ですが、家族から「絶対にイライラするからやめて」と止められたようです(笑)。

──そうなんですか。談志師匠は、流行り物とか結構好きそうなイメージがあるのですが……。

談之助 ウチの師匠はドケチで世界的に有名ですから(笑)。車も買わないし、日用品は使えればそれでいい。デジタルも苦手でしたが、実は自転車も苦手なんじゃないか? という話がありますよ。先代の圓楽師匠とウチの師匠が「どっちが自転車を乗れるか」で口論しているのを見たことがあります。現に、師匠の息子さんが自転車を欲しがっていたのですが、買ってもらえなかったそうですから。恐らく自分が乗れないのがばれたくないから、買ってやれなかった(笑)。

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