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“絶対王者”吉田沙保里はなぜ生まれたか──日本レスリング界の強さの秘密を探る『日本レスリングの物語』

proresjapan_xs.jpg『日本レスリングの物語』(岩波書店)

 日本中が沸いたロンドン五輪で、日本選手団は7個の金メダルと14個の銀メダル、17個の銅メダルを獲得した。体操の内村航平や卓球の石川佳純、女子サッカー代表などにメディアの注目は集まるが、日本の金メダルのうち4つは吉田沙保里、伊調馨、小原日登美、米満達弘がレスリング競技で獲得したものだった。

 数にして、日本の獲得した金メダルの半数以上を占める日本レスリング界の活躍。レスリング競技における金メダルの数でも、大国ロシアと同数の世界一。日本レスリング界の強さは、世界でも群を抜いているのだ。

 いったい、どうして日本はこんなにレスリングが強いのか? その秘密を解き明かすべく、日本におけるレスリングの歴史を記した一冊が、ノンフィクションライター・柳澤健氏による『日本レスリングの物語』(岩波書店)だ。
 
 日本におけるアマチュアレスリングの歴史は、1920年代にまでさかのぼる。1921年早稲田大学柔道部の庄司彦雄とプロレスラー、アド・サンデルが靖国神社で戦った異種格闘技戦を端緒として、日本にレスリングは導入された。引き分けに終わったこの試合の後、庄司はレスリング先進国のアメリカに留学。帰国後の1931年には、早稲田大学に日本初のレスリング部を設立した。

 翌年にはロサンゼルス五輪に初めて選手を送り出した日本レスリング界。しかし、その実力はまったく伴っていなかった。レスリングという新しいスポーツに流れてきた選手たちのほとんどは柔道の経験者。当時は柔道がオリンピック種目となっていなかった時代であり、選手たちはオリンピックに出場できるという理由だけで、柔道の経験を応用できるレスリングに流れたのだった。全員が柔道の高段者だったものの、もちろんレスリングと柔道は異なる競技。ロサンゼルス五輪では惨敗を喫し、続くベルリン五輪でもかろうじて入賞者は出せたもののメダルには届かなかった。

 その潮目が変わるのは、戦後になるまで待たなければならない。

 身長が低く、脚が短いという体型を活かし、欧米の強豪たちをタックルでねじ伏せる日本レスラーたちが活躍したのは1952年に開催されたヘルシンキ五輪。日本選手団のうち唯一となる金メダルを石井庄八が獲得し、戦後復興期の国民たちを勇気づけた。この金メダルに勢いづき、次のメルボルン五輪では、日本が生んだ世界の殿堂入りレスラー笹原正三と池田三男が金メダルを獲得し、その実力を見せつけた。

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