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“世界一セクシーな男”が好感度満点のダメダメ男を熱演『世界にひとつのプレイブック』

m0000000713.jpg(C)2012 SLPTWC Films, LLC. All Rights Reserved.

 不器用でも、人と違っていても、いいじゃないか。自分らしい人生を楽しんでみよう――。そんな温かいメッセージが伝わってくる、話題の新作映画2本を今週は紹介したい。

 『世界にひとつのプレイブック』(2月22日公開)は、現地時間24日に発表される第85回アカデミー賞に8部門ノミネートを果たしたことでも注目の、笑って泣けるヒューマンコメディ。妻に浮気され心を病んだパット(ブラッドリー・クーパー)は、仕事も家も失い、両親とともに実家暮らし。妻から接近禁止令を出されながらもいつかヨリを戻そうと自主リハビリに励むある日、事故で夫を亡くした傷心の女性ティファニー(ジェニファー・ローレンス)に出会う。過激な発言と突飛な行動でパットを振り回すティファニーだったが、パットから妻への手紙を渡すことで合意。彼女は交換条件で、ダンスのパートナーとしてコンテストに出場するようパットに求める。

 監督は『ザ・ファイター』(10)でアカデミー賞2部門受賞のデビッド・O・ラッセル。米誌の「世界一セクシーな男」ランキングで1位に選ばれたクーパーにしては珍しくダメダメな男の役だが、好感度満点の演技に思わず感情移入してしまうはず。ローレンスの真っすぐなまなざしと健康的でセクシーなボディ、ダンスシーンでの躍動感に引き込まれる。パットの両親を演じたロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーバーを合わせ、主演助演の男女4人がオスカー候補になるという31年ぶりの快挙を達成。4人を中心とする見応えたっぷりのアンサンブル演技を堪能したい。効果的に使われるBGM「Don’t You Worry ‘Bout a Thing」で歌われるように、「小さなことにくよくよするな」と励まされ、心がホットになる感動作だ。

 2本目の『横道世之介』(2月23日公開)は、『パレード』『悪人』の吉田修一による青春小説を、『南極料理人』(09)、『キツツキと雨』(12)の沖田修一監督が映画化。長崎県の田舎町で育った世之介(高良健吾)は、大学進学で80年代の東京へ。世間知らずだがお人好しの世之介に、周囲はとまどったりバカにしたりしながらも、次第に心を開いていく。ある日友達からダブルデートに誘われた世之介は、ちょっと変わった社長令嬢の祥子(吉高由里子)と出会い、互いに好意を抱くようになる。

 ユーモラスで少しセンチな原作小説の構成が尊重され、世之介と同じ時代を過ごした仲間が16年後にそれぞれ当時を回想するシーンが時折挿入されるが、終盤で明らかになるその理由もまた切ない。高良は地方出身のイケてない学生という役どころで、しみじみ人柄の良さがにじみ出る青年を爽やかに演じた。吉高のポワンとした雰囲気は、おっとりしたお嬢様役にぴったり。80年代に青春を過ごした世代ならおそらく懐かしさを覚えるはずだし、それ以外の世代でも若い時分の甘く苦い恋愛を呼び覚まされ、さまざまな感情を思い起こすに違いない。2時間40分という長さを感じさせず、いつまでも世之介と一緒に青春を過ごしていたいと思わせる好作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『世界にひとつのプレイブック』作品情報
<http://eiga.com/movie/77849/>

『横道世之介』作品情報
<http://eiga.com/movie/57830/>

最終更新:2013/02/22 21:00
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