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ホームレスは本当に減ったのか――支援の現場から考える『漂流老人ホームレス社会』

「経済競争力の糧にならない人間は、ホームレスか精神科病院か刑務所に社会は押しやっていないか。家族だけに責任を押し付けていないか」と、森川氏は問いかける。

 路上生活者だけではない。この社会のあらゆる場所に、自分の居場所を喪った「ホームレス状態の人」は存在する。路上生活者としてのホームレスは、確かに減少したかもしれない。しかし、本当に状況は「改善」されているのだろうか? 社会から隔離し、追いやることで問題を隠しているだけではないだろうか?

 精神科医として、統合失調症患者と話すとき、森川氏が大切にしていることは「コミュニケーションの原則を守ること」、つまり相手の立場を理解し、尊重することだという。脈絡なくしゃべっているような統合失調症患者や認知症患者にも、見えている世界があり、彼らはそれに基づいてしゃべっているにすぎない。コミュニケーションの原則においてすべきことは、それを否定することではなく、近づき、受け入れること。それは、森川氏の夜回り支援の現場にも生かされている。

 森川氏は「主人公は支援される側である」という前提を貫く。弱く、無能な人間に対して「まともな」人間が「支援をしてあげる」のではない。「主人公」である被支援者を支えるために、活動を行っているのだ。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

最終更新:2013/02/28 21:00
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