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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.222

「劇的ビフォーアフター」と岩井ワールドが合体『建築学概論』で味わう“蛇の生殺し”感覚!

kenchikugakugairon3.jpgこちらは大人になったスンミン(オム・テウン)とソヨン(ハン・ガイン)。
学生時代のあの感情は、スンミンの片想いだったのかそれとも……。

 学生時代をノスタルジックに描いた韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』(11)が女たちの友情物語だったのに対し、『建築学概論』は完全に男目線によるストーリー。ようやく改築工事を終えた主人公たちの行動は、「えっ、それでいいの?」と思わずにはいられない。学生時代の主人公をさんざん振り回したヒロインを思い出の中に閉じ込めてやろうという、見方によってはかなり残酷な仕打ちにも感じられる。本作を10年ごしで完成させたイ・ヨンジュ監督自身がずいぶん初恋をこじらせたクチではないだろうか。自分自身の長く続いた“蛇の生殺し”体験にケリをつけたくて本作を撮ったんじゃないですかね。

 『建築学概論』はある意味、男の身勝手さ、甘さ、バカさ加減を徹底的に美化して描いた作品だ。鈍感で設計図を引くこと以外に取り柄はなさそうなスンミンだが、そんな彼が曲がりなりにも建築士になれたのは初恋の女性・ソヨンとの出会いが大きかった。初恋の女性の唇からこぼれる言葉の数々は、男の一生をいとも簡単に左右してしまう。記憶の中で生き続ける初恋の女性は、男にとって永遠の聖女であるのと同時に魔性の女でもある。うかつに“思い出の小部屋”の鍵を開けることは気をつけたほうがいい。
(文=長野辰次)

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『建築学概論』
監督・脚本/イ・ヨンジュ 出演/オム・テウン、ハン・ガイン、イ・ジュフン、スジ、チョ・ジョンソク 配給/アット エンタテインメント 5月18日(土)より新宿武蔵野館ほかにて全国順次ロードショー 
(c)2012 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved
<http://www.kenchikumovie.com>

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