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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.227

男と女を結びつけているのは愛情か肉体か? 真木よう子主演の官能ドラマ『さよなら渓谷』

sayonarakeikoku03.jpg真木よう子の熱演ぶりが話題を呼んだ『ゆれる』(06)と同じく、今回も渓谷に架かる吊り橋がドラマの大きな分岐点となっている。

 この作品が出色なのはエンディングだ。決してハッピーエンドではなく、バッドエンディングに近いものだが、見終わった後に不思議な感慨が湧いてくる。ハッピーエンドでもバッドエンドでもない、このエンディングは何と呼べばいいのだろうか。とりあえず“第3のエンディング”と呼ぼう。幸せと悲しみがマーブル状になったこの“第3のエンディング”は、誰もがいつか見た光景(いつか見る光景)でもある。野球部のエースだった俊介も雑誌記者に転職するまでずっとラグビー一色の人生を送ってきた渡辺も体力には自信があるが、逆に若い頃の鋭敏さや繊細さが自分の肉体から消滅しつつあることを実感している。鮮やかなグリーン色に萌え上がる“さよなら渓谷”は青春の墓場であり、人生の折り返し点でもあるのだ。

 物語が終わり、エンドロールで真木よう子が歌うエンディング曲「幸先坂」が流れる。いや、真木よう子ではなく、かなこが歌う「幸先坂」だ。渓谷に架けられた橋を渡ったかなこの姿はすでに見えないが、歌声だけどこからか聞こえてくる。今日のかなこはちょっと機嫌がよさそうだ。そして、その歌声は昔、ひどい別れ方をしてしまった恋人の声にも少し似ている。
(文=長野辰次)

『さよなら渓谷』
原作/吉田修一 脚本/高田亮、大森立嗣 撮影/大塚亮 監督/大森立嗣 出演/真木よう子、大西信満、鈴木杏、井浦新、新井浩文、木下ほうか、三浦誠巳、薬袋いづみ、池内万作、鶴田真由、大森南朋 配給/ファントムフィルム R15 6月22日(土)より有楽町スバル座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー <http://sayonarakeikoku.com

◆『パンドラ映画館』過去記事はこちらから

最終更新:2014/05/14 11:19
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