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ラジオ批評「逆にラジオ」第24回

同僚アナとノーガードで打ち合う、本音トークの地下闘技場『田中みな実 あったかタイム』

 だが何よりすごいのは、相手にこれだけ厳しいセリフを、面と向かって言わせてしまう田中のキャラクターである。これはある意味、「ゲストから本音を引き出す力」という、アナウンサーに不可欠な能力といっていいだろう。「引き出す」というよりは「火をつける」に近いが、結果として対話が盛り上がり、聴き手を惹きつけているのは間違いない。

 では、田中はなぜ相手の本音を引き出すことができるのか? それは、彼女が非常にストレートな発想を持ち、なおかつそれに自覚的だからだろう。

 通常、素直でストレートな思考回路を持っている人間は、そのことに意外と自覚的でない場合が多い。それを世間では「天然」と呼ぶのかもしれず、いい意味でも悪い意味でも「空気が読めない」という表現が当てはまる。反対に、空気を読み真っすぐな思考を隠し通すことで何者かを演じ続けるのが「ぶりっ子」ということになるだろうか。

 しかし番組を聴いていて驚くのは、時に語られる彼女の自己分析が、恐ろしく的確であるように思えることだ。「上昇志向の塊」「野心家」「頑固」「0か100かみたいな人間」「すぐ顔に出る」「意外と自分に自信がない」「奥ゆかしさや遠回りする感じが足りない」「社交的に見えて、まったく心を開いていない。開けない。開くのが怖い」―世評とほぼ変わらぬその自己分析からは、予想外の客観性が見て取れる。そして、世間で言われていることに自覚があるからこそ、相手に何を言われても受け止めることができるし、相手にも同等のパンチを受け止めることを要求する。いかにも帰国子女っぽいコミュニケーション術だといえるかもしれないが、「何者かを演じている」わけではないのは確かだろう。少なくともこの番組において彼女は、どちらかというと本当のことを言い過ぎている。

 つまり田中は、「天然」でも「ぶりっ子」でもない。「天然」にしては自分を知りすぎているし、「ぶりっ子」にしては脇が甘すぎる。しかし、目の前の相手につい思ったことを口走ってしまうそのストレートな言動が、複雑怪奇な世の中とたびたび衝突することは容易に想像できるし、そんな他者との衝突こそがこの番組の面白さになっている。ラジオを聴くことで、多くの人にとってその印象が大きく変わるアナウンサーの一人だろう。
(文=井上智公<http://arsenal4.blog65.fc2.com/>)

「逆にラジオ」過去記事はこちらから

最終更新:2013/06/29 15:00
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