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小林政広監督ロングインタビュー

無縁社会、年金問題……沈みゆくこの国の現実! 国際派監督が描いた密室ドラマ『日本の悲劇』

nihonnohhigeki01.jpg思うように再就職できない息子(北村一輝)と闘病中の父親(仲代達矢)。父親が受け取るわずかな年金が親子の生命線だった。

──タイトルを聞くと、巨匠・木下惠介監督の『日本の悲劇』(53)を思い浮かべる人もいると思います。木下監督の『日本の悲劇』は、戦後の厳しい経済状況の中で慎ましい母子家庭が崩壊していく様子を描いていましたが……。

小林 木下監督の作品は別に意識していないですね。どんな内容だったか、あまり覚えてないくらい(苦笑)。実は木下監督とは別に、もうひとつ『日本の悲劇』(46)というタイトルの映画があるんです。これは亀井文夫という監督が撮ったドキュメンタリーですが、とんでもない内容です。軍と軍需産業が結託して戦争を起こしたことを糾弾した内容で、資本主義、金儲けのために戦争が始まり、その後には死体の山が累々……という。このドキュメンタリーは戦争が終わった翌年の1946年に公開され、GHQにフィルムを没収されて公開1週間で打ち切られたんです。これは公開するのも命懸けだったでしょう。すっごい映画ですよ。あの映画に比べると、ボクが撮ったのは本当に小っちゃな家族の物語ですよ。

■板の上で死にたいという役者の願望

──小林監督の『日本の悲劇』は無縁社会、年金問題を扱った社会派ドラマということになるんでしょうが、とある家庭内で起きるドメスティックバイオレンスならぬドメスティックサスペンス、もしくは密室パニック映画として観ることもできそうですね。

小林 そうですね。まぁ、でも今回はエンタテインメント性とかは何も考えないで作ったんです。だって、ひとりの男が餓死してミイラになる話ですよ。普通の神経じゃ、こんな映画は作りませんよ(苦笑)。自分でも一度はダメだと思った内容だったけど、3.11後にもう一度書き直して、それで整合性がついたというわけではないんですけどね。やっぱり仲代さんが「やる」と言ってくれたことが大きかった。共犯者がひとりでもいてくれると映画って動き出すものなんです。商業性うんぬんでもないですね。こんな映画は今までなかったから、逆に役者はやってみたいと思うんじゃないですか。普段はコマーシャルな仕事でみんな食べているわけだけど、原点に戻ってじっくり役に取り組んでみたいと潜在的に思っている役者はけっこーいると思いますよ。

──仲代達矢演じる父親・不二男の背中をカメラはずっと撮り続ける。亡くなった親の思い出というと、どうしても顔より背中のほうが鮮明に浮かんできます。

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