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ラジオ批評「逆にラジオ」第29回

ケンドーコバヤシの「許され力」がすべてを笑いに昇華する、性的逸話の解放区『TENGA茶屋』

 「部屋に入るといきなり大外刈りされる風俗」にハマッたという話(その時点で十二分に面白いが)の先には、「そのあと受け身の研究するために、柔道の試合をじっくり見た」という本末転倒な着地点が待っている。この4月からアシスタントを務める若手芸人アインシュタインの稲田直樹のルックスに関する話(彼はブサイクであることを前面に出す芸風で知られる)になれば、「お前は前世で神を殺している」と突如スピリチュアル方面へと飛躍した発言を繰り出し、さらには「神話の世界に終止符を打った男」という途方もなくスケール感溢れる異名を授ける。内容的には単なる悪口がさらにエスカレートした形なのだが、そのファンタジックな言葉の響きにはもはや格好よさしかなく、その話の内容と着地点のギャップがもう面白くて仕方ない。すべてが笑いと共に許される。

 自由を与えられた空間の中でこそ何かを極端にやり切れるし、極端に振り切れるとその先には逆サイドの端が見えてくる。行くところまで行けば善が悪になり悪が善になり、真面目が不真面目になり不真面目が真面目になり、下ネタにさえある種の品格が生まれてくる。この番組のコンセプトには「性を表通りに」という言葉が含まれているが、それはまさにケンコバが番組内で語っていた、かつての自身の体験に重なる言葉でもある。彼は若手時代、その行きすぎた芸風ゆえ腫れもの扱いされ、あるテレビマンから「お前なんか一生テレビ出れるか!」と言われたことがあるという。そんな男が、今メディアの最前線を張っている。現在のテレビが以前に比べて許容量を増しているとは到底思えないことを考えると、もちろん才能を認めてくれる人々との出会いというのも重要ではあるが、今のケンコバの「許される力」は、彼本来のファンタジックな発想力とトリッキーな話術を自ら大事に育み磨き続けてきたことによってもたらされた正当な結果だろう。この自由なラジオという空間で、それがあらためて明確になる。これほど痛快なことはない。
(文=井上智公<http://arsenal4.blog65.fc2.com/>)

「逆にラジオ」過去記事はこちらから

最終更新:2013/09/14 11:00
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