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お笑い評論家・ラリー遠田評『キングオブコント2013』かもめんたるが優勝した3つの理由

 また、人物の描き方にも独特のクセがあって、ひねりがきいている。ボケ役とツッコミ役が限定されていないのはもちろん、受け手にとっての味方と敵もはっきりしていない。彼らのコントでは、その物語をどういう立場から見るべきなのか、という視点さえも与えられないことがほとんどなのだ。

 例えば、今回の『キングオブコント2013』で披露された1本目のネタ「言葉売り」について考えてみよう。このネタは一見すると、路上で言葉を書いた色紙を売る若者の生き様を皮肉っているような印象を受ける。薄っぺらい若者とそれを真正面から批判する中年女性、という構図に見えるのだ。

 でも、このネタはその構図だけにとどまらない。若者を批判する中年女性にもちょっとした心の歪みがあり、手放しでそちらの味方をする気にもなれないようになっている。むしろ、物語が進むにつれて、面倒な中年女性に絡まれた若者に同情する気持ちすら浮かんでくる。そして、ここからさらに話は二転三転して、意外なところに着地する。

 これだけの密度を持ったストーリーを、笑いをまじえてたった4分で演じきっているのは驚異的なことだ。かもめんたるのネタは、まさに現代コントの進化の最先端。見れば見るほど深みにハマる、底なし沼のようなコントだ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

最終更新:2013/09/24 15:00
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