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初音ミクはどう世界を変えたのか? 柴那典+円堂都司昭+宇野維正が徹底討論

「JPOPが高速化するのと並行して、グダグダを楽しむ文化も広まってる」(円堂)

ーー先ほど円堂さんは、ある時期における音楽と周辺文化の関係性を網目状に記述したと仰ってましたが、柴さんはいわば縦軸、歴史性の導入の方に興味があった。

柴:言ってしまえば、単純にロックとつなぎたかったんです。僕はロッキング・オン出身で、そのキャリアが活かせるブルーオーシャンは他にないと思いました。

ーー柴さんがつなぎたかった“ロック”という文化は、どういったものを指している?

柴:日本のロックシーン自体が、2003年にTHEEMICHELLEGUNELEPHANTが解散したあたりから、思春期的でエモーショナルなロック・バンドが主流に切り替わってきたように感じています。ロックには、いわゆるスタイリッシュなかっこよさ、遡って行くとそれこそザ・フーやローリング・ストーンズといった、ロック・レジェンドから脈々と続くバンドのかっこよさもある。しかし00年代以降の日本のロックは言ってみれば「中二病」的な部分も魅力になっているのかと。僕自身は、それをポジティブに捉えていて、そういう文脈でも初音ミクとつなぎたかったんですよね。

円堂:それはよくわかりますが、キャラクターではない楽器としての初音ミクについて、もう少し読ませてほしかったという感想も持ちました。僕の場合、『ソーシャル化する音楽』の中で、キャラクターとしてのミクに至るまでを追っていて、その後に関しては、あまり追求していなかった。その先は、柴さんがやってくれるだろうと思っていたので(笑)。あと、最近の音楽について、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』の「浮世絵化するJポップとボーカロイド」の章では、楽曲のBPMが高速化して密度が濃くなっている、という指摘をしていますが、それって単純に体力が続かないと思ったんですね。たとえば、ももいろクローバーZのライブなどを観ると、3曲くらい続けて歌い踊った後、ゼイゼイしてグダグダなMCが始まったりするじゃないですか。ファンは、そんなグダグダも愛している。だから、高速化する一方で、グダグダもセットになっているのではないかと。そんな議論もしてみたいですね。

宇野:PerfumeのMCが長いのも、ある意味同じですよね。特にワンマンになると異様に長い(笑)。

円堂:曲の間はテキパキ踊っていても、そうしないともたないわけだし。あんまり間をおかずガンガン演奏するバンドだったら、1時間ちょっとでおしまいとか。2時間も3時間も高速でノンストップなんてできないでしょうし。結局、JPOPが高速化するのと並行して、グダグダを楽しむ文化も広まってる気がします。

柴:ニコ動などはそういう文化ですしね。それはあるかもしれません。

宇野:日本のロックバンドのBPMが速くなったきっかけって、凛として時雨とか、9mm Parabellum Bulletとか、X JAPANマインドがDNAに刻まれている世代のバンドが台頭してからだから、もう随分経つよね。最近はダンスロック系のバンドにしても、そうじゃないバンドにしても、また違ったフェーズに入りつつあるようにも思うんだけど。

柴:それはあるかもしれない。僕は、今の20代のバンドって、90年代とかに比べて遥かに演奏能力が上がっていると思っていて。

宇野:上がっている、上がっている。みんな上手くてビックリする!

柴:sasakure.UKっていうボカロPがプロデュースする有形ランペイジっていう日本のバンドがいて、2011年に「人間では演奏不可能なボカロ曲を演奏する」っていうコンセプトでデビューしたんですよね。で、「千本桜」っていう曲などを演奏していたのですが、今となっては「千本桜」はけっこうみんな演奏するんですよ。高速化を多くのバンドが乗りこなしつつある。この演奏能力の向上には、僕なりに思い浮かぶ理由がある。初音ミクを好きな子ってゲームから入っているケースが多いんですよね。実は初音ミク最大のヒット作は『初音ミク-ProjectDIVA-』というリズムゲームのシリーズで、曲に合わせてタイミングよくボタンを押すというものなんです。こういった音楽リズムゲームはずっと定番で、90年代からあるものなんですけど、最近の若いミュージシャンはあのアーキテクチャに適応している人が多くなってるんじゃないかと。リズムゲームで良い点数を取るには、0.01秒とかの単位でタイミング良くボタンを押さなければいけないので、正確に細かくリズムを刻むことができる才能が育まれたのではないかと思うんです。

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