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テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第88回

山口智子の演技は、なぜ“古い”のか?『心がポキッとね』の壮大な実験

tomokoyamaguchi000.jpg『心がポキッとね』フジテレビ

「すっごくたのしみにぃ、しててくれる人いるみたいでぇ、2,469人~、昨日一人増えちゃったぁ!」

と、意気揚々とSNS用の料理写真を撮る、山口智子演じる空間コーディネーター・静。

 言葉尻のアクセントが妙に上がるような、クセの強い抑揚のセリフ回しは古臭い。もちろん彼女は、あえてやっているのだろう。いわば、山口智子は、90年代の自分の演技の自己パロディをしているかのようだ。静が、40歳半ばにして、いまだに90年代的な自分探しをしているような自意識まみれの“病んだ”女性という設定だからだ。

 『心がポキッとね』(フジテレビ系)は、岡田惠和脚本、宮本理江子演出のドラマである。2人は、同局の『最後から二番目の恋』を手がけたコンビだ。主人公は、静の元夫の春太(阿部サダヲ)。現在は、アンティーク家具の修理を担当する仕事に就いている。もともとはサラリーマンで営業をしていたが、「なんで周りの奴らはできないんだろう」と思ってしまうほど、営業成績優秀。それゆえ、周りから疎まれ、上司から嫌われた結果、ありえないくらいのノルマを与えられ、精神的に壊れてしまう。

 そんなストレスを、彼は妻にぶつけ、暴力を振るった。いわゆるドメスティック・バイオレンスである。

「彼女を深く傷つけ、人生を狂わせてしまった。でも、愛してた。不幸にしようなんて、思ってもなかった。でも、してしまった。だからね、怖いんですよ、人と関わるの。だから、人と関わるの、やめようと思いまして」

 家庭と仕事を失い、公園でホームレスまがいの生活をしていた春太は、アンティーク家具店の社長、心(藤木直人)に拾われ、彼の自宅の1階を間借りして生活している。

 自分の世界に閉じこもる春太と、桜の下で偶然出会ったのが、みやこ(水原希子)である。

 彼女はかつての恋敵(山下リオ)に言いがかりをつけられて、ストーキングされている。彼女から逃げる手助けをしたのが、春太だった。

「あたしね、誰かのこと好きになるとおかしくなっちゃう。壊れちゃうんだよね」

と、みやこは言う。そう、現在ストーキングされているみやこもまた、ストーカーだったのだ。彼女は好きになった男を追い回し、警察に逮捕された経歴があるという。「全然そんなつもりじゃなかったんだけど、好きすぎて周りが見えなくなって空回りしてた」と。

 そんな彼女には現在、「神」と崇める存在がいる。彼女が絶望の淵に立ち、泣きじゃくっているところを、「何してるの?」と声をかけてくれた男だ。

 一方、静は現在、心と付き合っており、「お試し同棲」を始めるという。

 「静」というのは、春太にDVを受け深く傷ついたため、変えた名前だ。こんな不幸な自分は自分ではない、別の“本当の”自分を見つけなければ不幸である自分が本当になってしまうと、“自分探し”に奔走しているのであろう。周りに「センスのいい」ものをそろえ、「幸せなブログ、書きたい!」と偏執してしまうという“病”だ。

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