父が息子にペニスを移植 ― 過激で禁忌な【去勢映画】が描いた究極の愛
父親は家で一人、石で足の甲を一心不乱に擦っている。皮膚は破れ血が滲むが、次第に痛みは快感へと変わり、射精する。スキン・マスターベーション。息子のために、ペニスを擦らなくてもオーガズムが得られる方法をネットで見つけ試していたのだ。
接見日、それをプリントアウトした紙を息子に手渡す父親。独房でプリントを見て苦笑いする息子は、それを丸めて床に放り投げる。しばらくして、紙を拾い熱心に読み始める息子。壁の割れた欠片を取り出し、足は嫌だったのか腕で試す。このくだりは完全に『明日のジョー』だ。父親代わりの丹下段平が鑑別所に収監されているジョーに、ボクシングの基礎をしたためて出したハガキ「明日のために その1」のエピソードそのままではないか。
息子が出所すると、父親はネットで検索したペニス移植計画を実行する。彼のペニスは病院で保管されていたのだ。自分の息子に自分のムスコを移植する父親……究極の愛だ。接合は成功したが、試しにAVを見ても、雑貨屋の女の口で試しても(苦笑)一向に勃起しない。そんなタイミングで、家出していた母親が突然帰ってくる。
ベッドで寝ている父子の間に割り込む母親は、息子を愛おしく抱き寄せる。すると息子のペニスが勃起する。それを見て三者三様に驚愕(父子の驚きと母親の驚きは意味合いが違う)。母親と息子は魅かれ合い、ついに禁忌の扉が開かれる。母親は布団の中に手を差し入れ、ペニスを手コキ。背徳の快感に声を荒げ、イク息子。涙する母親。戦慄する父親。布団の中で嗚咽する息子。そして一家は……。
■映倫がNG 問題シーンとは?
この作品の公開に際し、まず韓国では「母親が息子の性器を切断」に批判が殺到。日本の映倫に当たる映像物等級委員会(映等委)が、「公の映画館では公開不可」と審査した。そこでキム・ギドクは、いくつかの過激シーンをカットし、映等委に再審査を依頼。それでも審査が覆らないため、彼は映画制作者や映画批評家から署名を集め、「19歳以上なら鑑賞可」のレーティングを勝ち取ったのだ。
ところが日本では、韓国や他国で「作品の芸術性を表現する上で必要」と認められている15歳の少年が女性の乳房を触るシーンが「児童ポルノ禁止法」に抵触する恐れがあると映倫がNGを出した。キム・ギドクは涙を飲んで該当シーンにハサミを入れ、『メビウス』はR15指定でようやく日本公開に至ったのだ。
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