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父が息子にペニスを移植 ― 過激で禁忌な【去勢映画】が描いた究極の愛

■キム・ギドクとパンツ愛

 ちなみに、この映画には「ペニス・ナイフ・仏像」という3つのメタファーが存在することは衆目の一致するところだろうが、私が特に注目したのは「パンツ」だ。高校生の子持ちの女が見せるパンツは、あらゆる角度からカメラが攻め入り、オナニストの琴線に触れる。また、やたらパンツを下ろすシーンが多いのも特徴だ。これは、キム・ギドクのパンツに対する偏愛を表現したものと勝手に感じている。

 タイトルの『メビウス』とは何を意味するのか。キム・ギドクはこう語る。「家族、欲望、性器は全て一つのものから始まっている。元々私たちは欲望から生まれ、欲望を再生するのだ。私たちはまるでメビウスの輪のように一つに繋がれている。だからこそ羨み、忌み嫌い、そして愛するのである」。本来、夫の浮気相手は別の女優で撮影が進んでいたが、諸事情で降板。だが、このアクシデントが思いがけない効果を生んだ。ピンときたキム・ギドクが母親役のイ・ウヌを一人二役に抜擢。高校生の子持ちと、20代の若い女を見事に演じ分けたイ・ウヌ。双方に絡む父子の性。メビウスの輪は、より複雑に捻じれ、繋がったのだ。

(文=天野ミチヒロ)

■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。

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最終更新:2015/07/23 09:15
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