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色眼鏡を取り除く“反原発抗議行動”ドキュメンタリー『首相官邸の前で』

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 その真摯な態度は、上映後のトークイベントでもなんら変わることがなかった。そう、この丁寧で控えめな態度こそが、小熊英二の素顔だったのである。

 トークイベントのゲストとして登壇したのは、昨今の安保法案の問題で注目を集めているSEALDsの奥田愛基・梅田美奈の2人。首相官邸前の脱原発デモに参加した当初は、デモの知識などまったくなかったという奥田は「社会の根幹が壊れかかっている。こういう時には、何が起こるかわからない」と、自らの体験から得た社会情勢についての見解を述べた。

 一方、震災前からいわゆる“高円寺系”の運動に興味を持っていたという梅田は、自らも学業とアルバイトという生活に追われる中でさまざまなプラカードをデザインするなど、とにかく自分にできることをやっていると発言。さらに奥田は「交通費がなく、会議を休むメンバーもいる」と、学生が行動することそのものが困難な社会構造が生まれているとも語った。

 こうしたゲストの発言を踏まえて、小熊監督が丁寧に補足する姿は実に印象的であった。

 トーク中、梅田が高円寺の「素人の乱」に触れていたため、イベント終了後の奥田に声をかけて少しばかり立ち話をした。筆者は自己紹介を兼ねて、“高円寺系”の中心的人物でもあるリサイクルショップ「素人の乱」店主の松本哉とは、彼が貧乏人大反乱集団を立ち上げた頃からの付き合いであることを告げたのだった。かつて筆者は松本をモデルとした劇場公開作『おやすみアンモナイト』(監督/増田俊樹)の脚本を執筆し、今月中旬に上梓される単著『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)の本文でも、松本と活動を共にした時代の経緯を鮮明に伝えている。そんな、中年に差しかかろうとしている筆者の思い出話に対しても「すごいですね」と奥田は笑ってくれ、爽やかな表情を見せてくれたのだった。

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