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『きょうだいコンプレックス』著者インタビュー

実は意外と多い!? 人には聞けない「きょうだいコンプレックス」原因と対処法とは

――成熟した自己愛を持った親であっても、知らず知らずのうちに子どもを分け隔てていることもあるそうですね。

岡田 はい、愛着の問題もあります。親との愛着が強く、関係が安定した子どもとそうでない子どもでは、決定的な差が生まれます。愛着とは、物心がつく以前に主に母親との間に生まれる絆であり、自分がよく世話をした子はかわいく、あまり世話をしなかった子は、あまりかわいくないということが起きてしまうのです。しっかりとした愛着によって結びついた存在は、その子にとっての「安全基地」となり、心のよりどころになります。しかし、安全基地となっていた存在がいなくなったり、機能しなくなると、心のよりどころを失い、パニックになる。親が安全基地となっている子と、そうでない子で差が生まれ、ひいては、きょうだい間や他の対人関係においても、敵意や被害者意識を生みやすくなります。

――本書にはニーチェをはじめ、フロイト、黒澤明、武田鉄矢、長谷川町子など、さまざまな有名人の事例も取り上げられていますが、きょうだいコンプレックスは仲の良いきょうだいでも、潜在的に持っているものなのでしょうか?

岡田 境遇に恵まれ、うまく克服された場合には、年上のきょうだいは、自分の良いモデルや目標として、年下のきょうだいは守り世話すべき存在として、その人の人間的な成長に役立つといえます。わだかまりがあまりない、幸福なきょうだいも、もちろんいらっしゃいます。ただ、一方は仲の良いきょうだいだと思っていても、相手のきょうだいは、そうは受け取っていないということもあるでしょう。お手本となるような“良い”きょうだいにしろ、常に領分を脅かしてくるような“悪い”きょうだいにしろ、小さい頃、きょうだいが大きな存在だった人には、なにがしかの心理的な支配があり、きょうだいコンプレックスが潜んでいるといえるでしょう。

――私自身、幼いころから2歳年上の兄との仲が悪く、よく暴力を振るわれていたのですが、兄が中学3年くらいになると、親との関係もいっそう悪化し、兄一人が家族から孤立するようになりました。その後、4年間の海外留学を機に、家族との関係が改善。しかし、帰国後2~3年でまた元の兄に戻り、現在は音信不通の状況です。私から見ると、両親の愛情は公平で、どちらかといえば、何をやっても器用にこなせる兄と比べられることが多く、兄のほうがかわいがられていたように思うのですが、それでもやはり、原因は両親にあるのでしょうか? 

岡田 まず考えられることは、2歳という年齢差で生まれた妹に対して、兄が、親からの愛情を奪われたという気持ちを抱き、それを引きずっていた可能性です。その嫉妬心が、暴力という形で表れていたと思われます。お兄さんは何かと頑張ることで、親に認めてもらおうとしていたのではないでしょうか。

 あなたには、お兄さんの不遇感は理解しづらく、親の対応も公平に思えるのでしょうが、お兄さんには、別の見え方をするのだと思います。あなたの記憶にある親との関わりだけをたどっても、そこには物心つくまでの時間的な空白もありますし、当事者としてのフィルターがかかってしまいますので、お兄さんが感じていた現実は見えてこないのでしょう。いずれにしろ、お兄さんからすると、親から距離を取ったほうが落ち着くということでしょうから、親が「安全基地」としてうまく機能してこなかった面があると思われます。

――うちの兄のように、一度コンプレックスが解消されたと思っても、また再発してしまうケースは多いのでしょうか? またその場合、再び解消される可能性はありますか?

岡田 距離を取ることで一見落ち着いたように見える場合、接触が増えて、またギクシャクし始めることは、よくあります。本当の意味で、コンプレックスが解消されたわけではないためです。お兄さんの場合は、きょうだいコンプレックスというだけでなく、その根底には、親との不安定な愛着の問題があるように思います。もしご両親が、本人だけの問題のように見ているとすると、改善には時間がかかるかもしれません。

――本書では、きょうだいコンプレックスが解消されるきっかけとして、結婚や身内の死、危機が迫り、不安が高まったケースが挙げられています。

岡田 きょうだいコンプレックスを克服するにはまず、その問題ときちんと向き合うことが第一歩です。そのきょうだいに対するネガティブな感情がどこから由来したのか、大きな視点で振り返る作業が必要です。また、結婚式や葬式のような特別なセレモニーの場に会することがきっかけとなって、わだかまりが緩んでいくことがあります。逆の場合もあります。解決のためのアプローチとしては、親に働きかける方法と、本人に直接働きかける方法があるといえます。拒絶されるのを恐れず、大きな優しさを持つということが大事でしょう。

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