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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

「ガウディ計画編」は再生を描いた──『下町ロケット』が掲げた“TBS品質”の矜持

 原作『下町ロケット』の発行日は2010年11月24日であり、『下町ロケット2』の発行日は15年11月5日だ。その2冊の間に日本を襲った大災害は、伊勢湾台風がそうであったように多くの悲しみや後悔を生み、そして日本の技術の象徴ともいえる原子力発電所への幻想も崩壊した。だがそれでも、技術者は立ち上がるのだ。悲しみや後悔を、夢や未来へと変えるために。ドラマ『下町ロケット』の「ガウディ計画編」が描く再生とは、まさにそういった種類のものだ。

 原作で描かれていない再生は、ドラマの最終回となる第10話でもエピソードとして追加されている。サヤマ製作所の社員で、データを偽造した月島(福田転球)は「もう一度取り戻しましょうよ。技術者としてのプライドを」と説得されて社長の椎名(小泉孝太郎)を告発し、技術者としての再生が示唆される。あるいは、椎名の亡くなった父親の開発した技術が新型ロケットの重要な部品として使われていることが明かされ、死をもってなお技術が再生される。そして椎名もまた、最後の最後で技術者としての再生を誓い、物語は終幕を迎えるのだった。

 どんな悲しみや後悔も、人は乗り越えることができる。口に出してしまうといささか気恥ずかしいこの言葉を、再生というテーマで映像化したのがドラマ『下町ロケット』の「ガウディ計画編」だ。だからこそこの作品は、今を生きる我々の心をつかみ、多くの共感を得たのではないだろうか。

 余談ながら、逆にドラマでは描かれていないが、原作ではしっかり描かれているのが、世良公則が演じた医師・貴船の再生である。貴船の再生の場面は原作では、ある意味でひとつのクライマックスだといってもいい。ドラマ『下町ロケット』を楽しんだ方は、そちらも併せて読んでみてはいかがだろうか。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは@aizawaaa

最終更新:2015/12/24 18:00
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