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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

登場人物の誰もが、“特別”な存在になる――人が人を好きになる方法『いつ恋』第3話

itsukoi0203.jpgフジテレビ系『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』

 ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の第3話は、人が人を好きになる行程が描かれている。

 順を追って説明したい。まず今回は、木穂子(高畑充希)の場面から始まる。彼女は主人公である練(高良健吾)の交際相手だ。第1話では練と一緒に寝ていたが、第2話では妻子のいる男と付き合っていることが明らかになった。代理店に務めるキャリアウーマンであり、派手な服装で、大人の色気もある。時折、博多弁の混じるその口調は、これまで多くの男を手玉に取ってきたのだろうと思わせる。

 そんな木穂子が、家具屋でカーテンを選んでいる。そういえば前回、練の部屋が殺風景だからカーテンや家具を買うだのなんだの言っていた。人生の成功者だ、金もあるのだろう。ヒロインの音(有村架純)が、必死に介護施設で働いているのとは大違いだ。彼女はカーテンを買う。そして、日もすっかり出た時間帯にもかかわらず、コンビニ店「ポプラ」の前で酒を飲んでいる。通りがかるカップルがこそこそ言っているが、そんなことを彼女は気にしない。人生の成功者から見たら、他人の目などは些細なことであり、堂々とした様子である。

 一方、我らが練と音は徐々に惹かれ合っていく。屋外で行われている小さなコンサートをこっそり二人で聴くシーン、アルプス一万尺の手振りもぴったりと合い、二人はそれぞれ別の場所で、今度会ったときに相手に見せようと路傍に咲く花を携帯電話のカメラで撮影している。その小さな、それでも美しい花は、地方から東京に出てきて理不尽さや寂しさと戦う二人を象徴している。誰に見られることはなくとも、花は美しく咲くのだ。それは、練と音も同じである。

 どう考えても、お似合いなのは練と音だ。まるで、運命が選んだような二人じゃないか。そして、音が練に告白する。けんかをするかのような激しい口調で「好きやからに決まってるやん。引っ越し屋さんのこと、好きやからに決まってるやん」と唇を奪う。絶対に付き合うべきだ。木穂子なんて、ほかに好きな男がいるんだし。それに、練には似つかわしくない。きっと、純朴な練の気持ちにつけ込んで、火遊びしてるぐらいの気持ちだろう。練はもっと、つらさを内に秘めて無理をしてでも必死で頑張るような相手が、絶対に似合うはずなのだから。

 長々と書いたが、ここまでがフリである。こうやって思っていた視聴者は、見事にだまされていたのだった。

 終盤になり、木穂子は人生の成功者などではなかったことが明かされる。代理店に務めているのは事実だが、実際は事務であり、地味な仕事ばかりで、練に会うときだけはトイレで服を着替えて都会的な自分を演じている。「私は朝起きたとき、今日一日をあきらめます」という、心の底からの叫び。冒頭、家具屋でカーテンを買う前には、実は銀行でお金を下ろしていて、コンビニの前で発泡酒を飲んでいたのは成功者として堂々としていたわけではない、ただ、人生をあきらめていただけだった。場面の意味は変わる。そして同時に、視聴者から木穂子への思いも変わる。練、何をやっているんだ。お前が幸せにしなければいけないのは音でない、目の前にいる木穂子その人だ、と。


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