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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.388

付き合ってもう長い彼女が“いい女”に思える瞬間。城定監督の『悦楽交差点』『舐める女』が一般上映

etsurakukousaten01恵比寿マスカッツのメンバーでもある古川いおりの映画デビュー作『悦楽交差点』。古川は本作でピンク大賞新人賞を受賞。

ピンク映画の主人公は、ほとんどの場合が名もない市井の人々だ。IT系のやり手社長が人気女子アナと結ばれ、めでたくゴールインするような物語はまず描かれることがない。時代の流れにぽつんと取り残された男と女がひっそりと肌と肌を重ね、しばしお互いの孤独感を埋め合う―そんな内容が圧倒的に多い。武蔵野美術大学を卒業後、助監督を経て、ピンク映画『味見したい人妻たち』(03)で監督デビューを果たした城定秀夫監督は、オリジナルビデオ作品『デコトラ・ギャル奈美』『エロいい話』などのヒットシリーズで知られる映像職人。低予算のビデオ作品やピンク映画を量産し続け、『いっツー The Movie 』(14)劇場公開時にインタビューした際「監督作はだいたい80本くらい」(本人もよく把握してない)とのことだったので、監督作はもう100本前後になるはず。これだけ多作でありながら、城定作品には裏切られることがない。男女間のやるせない心情の機微が鮮やかに描かれ、また人生のままならなさにのたうち回る主人公に温かい視線が注がれている。

8月20日(土)~9月2日(金)、都内のテアトル新宿にて「OP PICTURES+フェス」が開催される。これはピンク映画でおなじみ大蔵映画が制作したここ1~2年の人気作品をR18とR15の2バージョンを用意することで、一般映画館でも上映しやすくした新企画。成人映画館には足を踏み入れづらかった人でも、気軽に楽しむことができる。城定監督の『悦楽交差点』と『舐める女』もプログラムされているので、城定作品未経験者にも長年の城定ファンにもおすすめしたい。

2015年ピンク大賞優秀作品賞&新人女優賞を受賞した『悦楽交差点』は、城定監督が手掛けた脚本の面白さが光る作品だ。物語の主人公は交通量調査の男性フリーター。ピンク映画ならではの、何ともマイナーな設定である。フリーターの春夫(麻木貴仁)は新宿駅西口ガード下近くの交差点で、ひたすら通り過ぎていく女性の数をカウントしながら、何かブツブツ言っている。よく聞くと「1000人目は俺の嫁」と繰り返し呟いていた。目の前を歩いていく女性の中に自分の理想の女性がいるはずだと思い込みながら、カウントしていたのだ。かなり危ない主人公だ。ヨボヨボのおばあちゃんが歩いてきたらどうするんだよと余計な心配をしていたら、ぱっと辺り一帯が明るくなる清廉そうな美女が春夫の前を過ぎていく。彼女こそ1000人目の女性だった。春夫はついに理想の女性に巡り合ったのだ。

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