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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.388

付き合ってもう長い彼女が“いい女”に思える瞬間。城定監督の『悦楽交差点』『舐める女』が一般上映

etsurakukousaten02真琴(古川いおり)を“運命の女”と思い込む春夫(麻木貴仁)。春夫は彼女を見守っているつもりだが、どう見てもストーキングだよ。

運命の出会いから5年の歳月が流れた。フリーターを辞め、工場でマジメに働く春夫は、仕事が終わると一目散に安アパートに戻る。あの運命の女性・真琴(古川いおり)に逢うためである。といっても安アパートで真琴と同棲しているわけではない。近所の洒脱な一軒家で、真琴は一流企業のエリート社員(田中靖教)の人妻として暮らしていた。真琴が夫のために夕食を甲斐甲斐しく準備する様子を、春夫は双眼鏡で覗き見しながら冷たいコンビニ弁当を食べていた。真琴の口の動きを読唇術で解読しながら、真琴と一緒に食べる弁当の味は格別だった。春夫の妄想力と歪んだ純情さは尋常ならざるものがある。

でも、こんな生活をいつまで続けていても仕方がない。春夫は真琴の私生活を覗き見するだけでなく、夫へのストーキングも開始。夫が社内の若い女子社員とラブホテルに通っている事実を突き止め、証拠写真を真琴に送りつける。これで真琴は夫と別れ、ずっと見守ってきた俺の存在に気づくはず。ところがその晩、春夫が双眼鏡を覗くと、真琴は笑顔で夫を迎え入れ、夕食を用意し、さらにベッドではいつも以上に激しく燃えているではないか。なぜだ? デリヘル嬢(佐倉萌)と金銭を介した付き合いしかない春夫には、夫婦間の駆け引きがまったく理解できない。落ち込んだ春夫は工場を無断欠勤し、クビになってしまう。

物語は後半大きく変動する。失恋と失業のWショックを受けた春夫が、安アパートのせんべい布団で目を覚ますと、真琴がにっこりと微笑んでいた!! えっ、これは神様が俺のことを哀れに思って、夢を見させてくれているに違いない。春夫は憧れの女性・真琴のおっぱいを揉み、激しく腰を振る。身もだえる真琴は、春夫の妄想ではなかった。真琴はすべてを知っていたのだ。男はみんなスケベでバカでどうしようもない生き物であることを真琴は承知した上で、せっせと夫の食事を作り、夜はセックスの相手をし、朝は笑顔で送り出していた。仕事ができる将来有望な社員なら、職場でもてるのも仕方ないと割り切っていた。春夫から覗かれていることにも以前から気づいており、夫婦の性生活がマンネリ化しないための興奮材料として活用していた。真琴は春夫が脳内でイメージしていたような薄っぺらい清純な聖女ではなかった。春夫の想像を遥かに上回る、大きな大きな観音さまのごとき存在だった。春夫は妄想ではない、生身の女性を愛することの喜びと難儀さを真琴から同時に学ぶことになる。


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