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「いんばいになるか、死をえらぶか、といわれたら、死ぬんだった」“からゆきさん”として体を売った少女たち

 中村淳彦の『日本の風俗嬢』(新潮新書)、坂爪真吾の『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、そして鈴木大介の『最貧困女子』(幻冬舎新書)など、性産業を描いた書籍は近年、新書を中心に好調な売れ行きを見せている。現代の格差社会を背景にした売春を描いたこれらの書籍には、「エロ」だけでは語れない女性たちの姿がつづられている。

 作家・詩人である森崎和江の『からゆきさん 異国に売られた少女たち』は、今から40年前の1976年に刊行された書籍であり、今年8月に朝日文庫より復刊された。本書を一読すれば、この海を渡って売春を行った「からゆきさん」たちの境遇が、驚くほど現代に似ていることがわかるだろう。

 シベリア、朝鮮、大連、上海、シンガポールなどのアジア各国から、アメリカ、オーストラリアまで、海を渡って世界各地で売春を行った女性たちは「からゆきさん」と呼ばれた。明治維新によって開国した日本からは、新天地を求める男たちだけでなく、それを慰撫するための少女たちが海外へと連れて行かれたのだ。本書の軸となるのは、明治29年に天草に生まれ、朝鮮へと売られたおキミ。作者は、偶然知り合ったおキミの養女である綾から、その壮絶な体験と、老婆になっても悔い続ける姿を知る……。

 よく知られているように、もともと日本は、性に奔放な土地だった。田舎の村々には夜這いの風習が近代以降も残り、当時の福岡の新聞には「13歳以上の者にして男と関係せざるものはない」と書かれているほど。キミの育った天草地方でも、日露戦争の頃までは夜這いの風習が残されていて、心の通った男とは妊娠してからの婚姻が当たり前だったという。

 しかし、おキミたち「からゆきさん」が男たちから求められるセックスは、そんな牧歌的な日常とは程遠かった。口減らしのために、浅草の見世物小屋の養女となったおキミは、16歳の頃、再び李慶春という男のもとに養女として出された。しかし、李の目的は、彼女に売春をさせることだった。ほとんど誘拐に近い形でおキミは神戸に連れて行かれ、貨物船に乗せられた。そして、その船内で李をはじめ数々の船員たちと「おショウバイ」をさせられたのだ。それを断れば、食事すらも与えられず、おキミはただただ男たちを受け入れるしかなかった。おキミと共に貨物船に乗せられた14人の少女たちは、昼も夜も「おショウバイ」を強要され、誰もが泣いていた。そして、貨物船が朝鮮半島南端の漁港木浦(もっぽ)に着くと、少女たちは北朝鮮の鉄道敷設現場につくられた娼楼へと送られる。


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