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『24時間テレビ』の裏で障害者番組『バリバラ』が“感動ポルノ”批判! でも溜飲を下げる前に考えるべきことが

 次に、グレース氏は口からご飯を食べることができないため、胃に開けた穴にパイプを差し込み直接栄養を摂っていると伝えられるのだが、そこでディレクターが「大変ですよね」と声をかける。当然、ここでテレビが欲しいのは苦労の言葉だが、グレース氏はとくに表情も変えず「いや、意外と食べる手間も作る手間も省けるので、そんなことはないですけどね」と返答。「いや、大変でしょ」とディレクターは畳みかけるが、グレース氏は「楽ですよ、むしろ」。このグレース氏のあっけらかんとしたコメントは、感動ポルノでは「放送しない部分」だとテロップ解説が入る。

 また、多発性硬化症を発症したときのことを回想するシーンでは、ディレクターが「相当ショックだったでしょうね」と、発症して柔道もできなくなってしまった当時のことを質問すると、やはりグレース氏は「いや、でもその病院にめっちゃイケメンの先生がいて、めっちゃテンション上がりまくりでした」。もちろん、これも「放送しない部分」だ。

 大変な生活なのだという演出に加え、「過去の栄光」がクローズアップされ、「悲劇」を畳みかける。その上で「仲間の支え」が語られ、締めは「いつでもポジティブ」……。まさに『24時間テレビ』をはじめとする障害者ドキュメントの“お約束”の数々だが、これこそが「感動ポルノ」だというわけだ。

 まさに「感動」を日本中に届けている『24時間テレビ』の真裏で、障害をもつ当事者たちが「感動の材料にしないで」と声を上げる……。この『バリバラ』の問題提起がネット上で大きな話題となったのは、『24時間テレビ』の“感動の押し売り”に違和感をもっていた人たちにとって、溜飲が下がるものだったからなのだろう。

 実際、現在の『24時間テレビ』は、「感動ポルノ」と批判を受けても仕方がないものだ。というのも、今年の同番組は、いつものように障害者のチャレンジ企画を放送する一方で、7月に神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起こった殺傷事件について、番組として言及することは一切なかったからだ。

 相模原事件の容疑者は「障害者なんていなくなればいい」「障害者はすべてを不幸にする」「障害者には税金がかかる」という考えから障害者の命を奪ったが、この事件は同時に、社会には容疑者と似たような価値観が広がりつつあることをも明らかにした。そして、いまもなお、障害を抱える人びとはその社会に対し、自分も襲われるのではないか、いなくていい存在だと思われているのではないかと、大きな不安を抱きながらの生活を余儀なくされている。

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