日刊サイゾー トップ > その他  > 日本のポップカルチャーが中国に与えた影響は?

どのように日本のポップカルチャーは中国に影響を与えたのか? 『ギャグマンガ日和』の「給力」が記憶に新しい「動漫」文化の変遷

 ちなみに「連環画」も当時の世相が反映されているようで、「アトムと孫悟空は、どっちが勝つ負けるではなく最後に友達になるものが多いんです」「『トランスフォーマー』も孫悟空と戦うんですが、何故か戦って負けて土下座をさせられるものが多かったりします」(古市)

1609_bilibili.jpg画像:ビリビリ動画公式サイトより

「2000年以降のポップカルチャーの受容の場は、ネット上に移行していきます。それまでファンは『連環画』やおもちゃとか、路上で売ってる海賊版のようなものとか、ミニコミ誌とかを必死で収拾していたんですが、ネットで簡単に情報が入ってくるようになると、文化に大きな影響を与えてきます。『ニコニコ動画』も一時期は見れていたんですが、見れなくなったので、代替するものとして同じような『ビリビリ動画』(中国のBILIBILIチームが制作した動画サイト)ができて、(ファンは)弾幕を作りつつ見ています。『百度(バイドゥ)』の掲示板を利用して情報収集をしたり、日本語の分かる人が情報提供をしたりして、すぐに手に取れるようになっていったんですね」(古市)

 ネットの普及に伴い「動漫」という言葉も次第に変化。「単にアニメ・コミック・ゲームという意味だけでなく、ネットカルチャー全てを含む認識になってきました。今使われている『動漫』という言葉は、ネットカルチャー・ポップカルチャー・サブカルチャー、場合によってはJ-POPやファッションだったりとかを含めた概念へと変化してきました」と、広がりを見せているようだ。

「こうした日本の影響がどういったところに現れているかというと、一番分かりやすいのが言葉なんですね。日本語と中国語で同じ漢字文化圏ではありますが、近代化の過程で中国は政治とか社会といった、(自国にない)西洋の概念を取り入れる際に日本語を輸入してきました。80年代に国交正常化して鄧小平が来日した時に、新幹線とか家電製品とかの消費文化の概念を日本語から輸入して、自分たちのものとしてきたんです」(古市)

hiro16china5.jpg写真:日本のポップカルチャーに由来を持つネットスラング

 同時にネットスラングを通して、第3次日本語ブームともいうべき現象が起きているという。「例えば『ギャグマンガ日和』のファンが中国語に面白おかしく翻訳し、さらに好きな人たちが自分たちでアテレコしてファンに聞いてもらうという二次創作的な作品ブームが出てきます」。

 古市は彼らが日本語を輸入するだけでなく、新しい言葉を作り出す動きにも注視している「(『ギャグ日』の)ファンが翻訳した言葉の中で、西遊記の回のアテレコは特に完成度が高く、たまたま使われた『給力(ゲイリー)』という言葉が(中国のネット上)一世を風靡してしまいました。『給力』は地方で使われている言葉で、全国的には全く有名では単語ではなく、日本語の意味としては『地味だなぁ』といった単語だったんですが、今では『給力』は良い意味で『ヤバイ』とかのニュアンスで、テレビの司会者とかも使いますし、『人民日報』の一面でも使われるくらいの力を持った単語になってしまいました。ネットスラングの6割ぐらいが日本のアニメ由来なんじゃないかなといった勢いがあります」(古市)

 このほか古市は、中国で行われている同人誌即売会やコスプレイベントのほとんどが企業によって有料で企画されていることや、自身が籍をおく北京大学のファンサークルに1000人弱の会員数がいること、明治大学から2万冊ものマンガが寄贈され、マンガ図書館が学内にオープンしたことなどに触れて講演を終えた。

「ただこうした学生たちが日本のポップカルチャーが好きだから日本のことが好きかというと、それはまた別の問題だと思うんですね。それは当然で、日本でもK-POPや韓流ドラマが好きだと言っても、韓国が好きであるかは別の問題です。日本のことを好きになってもらうとかじゃなくても、アニメとか文化を中心に同じ記憶や価値観を持つ人たちがいるのは素晴らしいことだと思うんです」(古市)
(取材・文/真狩祐志)

■広島国際アニメーションフェスティバル
http://hiroanim.org/

最終更新:2016/09/03 07:15
123
ページ上部へ戻る
トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

小池百合子都知事周辺で風雲急!

今週の注目記事・第1位「小池百合子元側近小島敏...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真