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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.398

知らぬ存ぜぬは許しません!! 90歳の認知症患者がナチス狩りに燃える復讐談『手紙は憶えている』

tegamihaoboeteiru01もうすぐお迎えが来るので、怖いもの知らず。90歳になるゼヴ(クリストファー・プラマー)は手紙を頼りに、ナチス狩りを始める。

 法が裁かぬ極悪人に鉄槌を喰らわせてやりたい。自分の人生を狂わせた相手に同じ目を遭わせてやりたい。復讐心という感情は、人間を突き動かす大きなエネルギーとなる。サスペンスものを得意とするアトム・エゴヤン監督の新作『手紙は憶えている』(原題『Remember』)はこれまで数多く作られてきた復讐ドラマの中でも、最上級の設定が用意されている。主人公はあの世からもうすぐお迎えが来そうな90歳の老人。カナダの名優クリストファー・プラマー演じるこの主人公は第二次世界大戦時のユダヤ人強制収容所からの生還者で、70年前に家族を皆殺しにしたナチス兵への復讐を果たすことを生き甲斐としている。あの憎きナチス兵をぶっ殺すまでは、おちおち死んではいられない。認知症を患い、ゆっくりとしか動かない体を奮い立たせ、生きているか死んでいるのか分からないナチス兵を探し出す復讐の旅へと向かう。

 90歳になるゼヴ(クリストファー・プラマー)は高齢者向けの施設で何不自由なく暮らしていたが、認知症が進み、眠りから覚めると傍らに妻ルースがいないことに動揺する。ルースは1週間前に亡くなっており、そのことを思い出す度にゼヴは深い喪失感に見舞われてしまう。そんなゼヴに同じ施設に入っているユダヤ人のマックス(マーティン・ランドー)から「1週間前に渡した手紙を覚えているか。今こそ手紙に書いた約束を実行してほしい」と告げられる。その手紙には自分たちはアウシュビッツ収容所からの生還者であり、家族はナチス兵によって殺されたこと、そのときのナチス兵は名前を偽って米国で暮らしていることが記されていた。ナチス兵は“ルディ・コランダー”と名乗り、4人の容疑者が米国にいるところまでマックスは突き止めていた。車椅子でしか動けないマックスが情報を集め、容疑者の現住所リストや宿泊先の手配は整えてくれていた。後はまだ体が動くゼヴが現地へ赴き、本人かどうかを確かめた上で処刑を行なうだけだった。覚束ない手つきで拳銃をかまえる90歳のナチスハンターはこうして誕生した。

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