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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.398

知らぬ存ぜぬは許しません!! 90歳の認知症患者がナチス狩りに燃える復讐談『手紙は憶えている』

tegamihaoboeteiru03ハーケンクロイツの旗が飾られた容疑者宅。ナチス崇拝者が米国にいまだにいることを、ゼヴは目の当たりにする。

 脚本は本作でデビューを飾った新人ベンジャミン・オーガストのオリジナルストーリー。実績のない新人の脚本を読んだプロデューサーのロバート・ラントスは「この物語を現在の物語としてみせるには、今すぐ撮るしかないと思った。もし10年後に作ってもリアルじゃなくなってしまう」と速攻でアトム・エゴヤン監督に連絡し、製作に着手した。エゴヤン監督とは、ホロコーストの30年前に起きたアルメニア人大虐殺を題材にした『アララトの聖母』(02)でタッグを組んだ仲だった。終戦からすでに70年以上の歳月が経過し、戦争体験者は年々減りつつある。認知症に悩まされ、手紙を読み返さないと自分が何者であるかも容疑者の名前もすぐに忘れてしまう哀しい復讐鬼・ゼヴは、1929年生まれのクリストファー・プラマーでなくては演じられない役だろう。

 復讐ものの常で、結末は非常に後味が悪い。『手紙は憶えている』は最上級の復讐ドラマゆえに、最上級の後味の悪さが待っている。この舌先にザラザラと残る苦味は、復讐ミステリーとして不完全さがあるからなのか、それとも戦争体験は敵味方の区別なく忌わしさを植え付けるものだからなのか。70年という歳月に比べればほんの一瞬に過ぎないが、映画を見終わった後、かなり長く後味の悪さが尾を引くことになる。
(文=長野辰次)

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『手紙は憶えている』
脚本/ベンジャミン・オーガスト 監督/アトム・エゴヤン 
出演/クリストファー・プラマー、マーティン・ランドー、ブルーノ・ガンツ、ユルゲン・プロホノフ、ハインツ・リーフェン、ディーン・ノリス、ヘンリー・ツェニー  
配給/アスミック・エース PG12 10月28日(金)よりTOHOシネマズハンテほか全国ロードショー
(c)2014,Remember Productions Inc.
http://remember.asmik-ace.co.jp


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最終更新:2016/10/28 17:00
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