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『モザイクの向こう側』発売記念特別対談第2弾

元・着エロアイドルが明かす、AVと着エロの危うい境界線「同じことをやるなら、AVのほうがいい」?

mozaiku1109.jpg『モザイクの向こう側』(双葉社)

■着エロからAVに行くのは、よくわかる

井川 吉沢さんは1本目のDVDでモメた際、「発売を取りやめるんだったら、200万円払え」って言われたそうですね。

吉沢 はい。結局、仕上がった作品を見てみたら、自分が思っていたほどエグくなかったんで、200万円も払うのはバカバカしいと思い、取りやめはしなかったんですけど(笑)。AVだったら、だいぶこの額も異なりますよね。

井川 1本のキャンセル料だと、似たようなものでしょうか。スタジオ代とかスタッフのギャラとか、賠償額は50~200万ぐらいの間だと思いますよ。ですが、AVの場合、単体の複数本契約というものがあります。国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」が報告した被害事例の中には、2,460万円の賠償金を請求されたケースがありました。これは、10本契約を結んだ単体の子が、1本目を撮り終えた後に「もう出演できない」っていう話になったみたいです。そこで、事務所側は、もしも残りの9本を撮っていたらこれぐらい稼げていたはずだということで、その料金を賠償金に加算したんです。

吉沢 ケタ違いですね。そんなに請求されたら、途中で嫌だと思っても逃げられないですよ。グラビアだと、10本契約なんてまずありません。人気のある子で、よくて2~3本ですね。

井川 そうですよね。ちなみに吉沢さんって、AVに誘われたことはあるんですか? 2008年に芸能人専門AVメーカーのMUTEKIが発足して以降、着エロアイドルがAV出演を口説かれるケースが増えましたが。

吉沢 私も誘われましたね。そのときは、「次にDVDを出すのであれば、乳首ポチとかやらないといけない」って言われ、それでグラビアが嫌になって、フリーになった頃だったんです。そしたら、DVDのプロデューサーから「こういう話があるんだけど」って、MUTEKIの提案をされたんです。1本1,000万円で、プロデューサーが仲介料として100万円抜くから、900万円という話でした。結局、怖気づいちゃって出なかったんですけど。

井川 いやあ、芸能人の冠が付くと額が違いますね! 今は単体のトップクラスが1本300万円程度じゃないかな。仮に事務所と折半だと、本人の取り分は150万円ということになりますね。

吉沢 私、着エロアイドルの女の子がAVに行くのは、すごいわかるんですよ。結局、着エロDVDでも、エグいことさせられるわけじゃないですか。ソーセージに練乳をかけたやつを舐めるとか。ローター使ってオナニーとか。下のアングルから撮影されて、腰を振っているから騎上位みたいな感じで撮られるとか。やっているうちに、むなしくなるんですよ。これなら、AVのほうがキレイなんじゃないかなって。AVのほうがお金もかけられている分、ジャケットもキレイに作られるし。それに、今は恵比寿マスカッツみたいに、AV女優がアイドル化しているから。

井川 その気持ちはわかります。着エロからAVに転身した子は何人かインタビューしましたけど、みんな、「AVに行って、こんなにチヤホヤされるとは思わなかった」って言うんですよね。ファンが爆発的に増えて、Twitterのフォロワー数も2,000ぐらいだったのが、数カ月で2万人を超えてしまったりとか。

吉沢 着エロのDVDを買う人って、今はすごくコアな存在なんですよね。あまり雑誌にパブが載ることもないし、DVDを買いに行っても、すごい端に着エロコーナーみたいなのがある感じで。DVDも今、1,000本売れたらヒットという感じで、300~500本程度でも次出せるというぐらいの規模なんです。

井川 やっぱり、AVの市場規模は、だいぶ大きいですよ。AVが売れない時代とはいっても、大手メーカーだと発売の初月で1,000本はクリアしておかないと話にならないって感じですし。

吉沢 今の若い子だと、グラビアアイドルよりAVに出たいっていう子のほうが多いんじゃないですか? AV女優になってお金をいっぱいもらって、恵比寿マスカッツに入りたいって。

井川 金銭面に加え、世間に認知されるという点でいうと、確かに着エロアイドルより、AV女優のほうがいいと思います。だから、スカウトマンも「タレントやってレッスン料を払うぐらいなら、AVやったほうがいいよ」って、芸能志望の子を誘うんですよ。ただ、ここで問題があります。AVの地位って、この10年ぐらいの間に急速に上がったんですけど、今回の警察の摘発でもわかるように、法的にはビミョーなところにあるんです。モザイクの向こう側では本番をやっていないっていう、ごまかしの上で成立しているジャンルですしね。この法的なところをクリアしてあげないと、日本のAVはグレーなビジネスのままです。あと、恵比寿マスカッツとかの例外はあるけど、基本的に地上波だと「裸をやってる子はダメ」ってなっちゃうし、CMは余計に取りにくい。そこそこのスポンサーが付いている、規模の大きな映画も同様です。だから、タレント志望の女の子の中は、AVに出て有名になるはずだったのに、逆に思うように活動できないっていうジレンマに陥っちゃうんですね。AV関係者が、芸能志望の子に対して、そういうリスクを説明しないで誘うのはよくない。

吉沢 難しいところですね。

井川 昔の女性は、AVは風俗みたいなものだと割り切ってやっていたけど、時代は移り変わってきています。いまAVは、立ち位置が曖昧になっている業界で、だからこそ、こうした強要の被害が起こっているのかなと思いますね。

●「AV出演強要問題」に揺れる業界を徹底取材!
『モザイクの向こう側』
井川楊枝 著
双葉社 刊
1400円+税

最終更新:2016/11/10 11:39
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