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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.411

超保守化する米国社会に反旗を翻した男がいた!! マシュー・マコノヒー主演『ニュートン・ナイト』

newtonknight01マシュー・マコノヒー主演作『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』。庶民の視点からリアルな南北戦争が描かれる。

 戦争を始めるのはいつも金持ちたちで、戦場で死体の山となっていくのはビンボー人だけ。数百年、数千年と人類はそんな歴史を繰り返してきた。金持ちや政治家たちの利権争いだと分かっていても、安定した仕事のないビンボー人は食べていくために軍隊に入らざるを得ない。戦場の悲惨さを知って脱走すれば、裏切り者として真っ先に処刑される。ちょっと待てよ、それっておかしいだろ? 米国人同士が殺し合った南北戦争のさなか、ビンボー人だけが戦場に駆り出される不平等さに異議を申し立てたのがミシシッピ州の農民ニュートン・ナイトだった。マシュー・マコノヒー主演作『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(原題『FREE STATE OF JONES』)は、南北戦争中に南軍でなければ北軍でもない、“ジョーンズ自由州”を立ち上げた歴史上の人物、でもほとんどその存在を知られていなかった無名の英雄にスポットライトを当てている。

 時代は1862年。米国は北軍と南軍に分かれた南北戦争の真っ最中だった。南北戦争は工業化が進む北部と農園経営で成り立つ南部との主導権争いから起きた内戦で、4年間の戦いで60万人もの戦死者が出ている。この数字はネイティブ・アメリカンに対する虐殺を除いて、米国が関わった戦争で最も多い犠牲者数だ。南軍に属するミシシッピ州ジョーンズ郡出身の白人農民ニュートン・ナイト(マシュー・マコノヒー)は北軍に対する恨みはないが、兵役のため否応なく戦場に駆り出されていた。同じ隊の仲間から「奴隷を20人所有している農園の長男は兵役を免除される。40人所有していれば次男も免除される」という黒人20人法という新しい法律ができたことを知らされ、あまりの不平等さに怒りを覚える。そんなとき、ニュートンのまだ幼い甥っ子ダニエル(ジェイコブ・ロフランド)が新兵として戦場に送り込まれてきた。銃の扱い方も知らないまま最前線に立たされたダニエルは、北軍の銃弾を浴びてあっさりと戦死。我慢の臨界点を越えたニュートンは甥っ子の亡がらを実家に届けるため、無断で軍隊から離脱する。

 故郷に帰ったニュートンが目にした光景は、戦場以上に酷い現実だった。男たちが戦場に送り込まれ、女や子どもしかいない村では南軍はやりたい放題だった。農民たちの収穫をことごとく搾取し、納められない者からは家財や家畜さえも奪い去ろうとしていた。あまりの横暴さにブチ切れたニュートンは、南軍の将校に銃口を向けて追い返してしまう。当然ながら、ニュートンは戦場からの脱走&反逆罪でお尋ね者に。黒人女性レイチェル(ググ・ンバータ=ロー)の案内で、ニュートンはミシシッピ州の奥地にある沼地へと身を潜める。そこは農園から逃げ出してきた黒人奴隷たちの隠れ場所だった。ニュートンは“梁山泊”よろしく沼地を拠点にして、黒人奴隷や逃亡兵たちと共に捜索隊との戦いを始めた。南軍の圧政に苦しめられていた村の女性や子どもたちもニュートン一派に加わり、反乱軍は勢いを増していく。ついにニュートンは白人と黒人を差別しない“ジョーンズ自由州”を立ち上げ、わずか500人の手勢ながら南軍100万人に対して反旗を翻す。

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