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【おたぽる】

【劇場アニメレビュー】再発進した『ヤマト』で福井晴敏節が唸る!?  『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』

『さらば』では初代艦長・沖田十三の親友でもあった土方竜が二代目艦長を見事な存在感で担ってくれていたが、TV版『2』では古代進が二代目艦長に着任し、土方はあろうことかアンドロメダ艦長へと設定が変更されていた。

 さらに今回は神田沙也加の美声も麗しい(まだほんの少ししか出番はないけど)テレザート星のテレサだが、『さらば』では宇宙の愛を象徴し、しかも触れたら大爆発する反物質の身体を持つ“女神”として映えていたものの、『2』ではなんとヤマト・クルーの島大介と恋に落ちるという“人間”もどきに成り下がり、多くのファンを落胆させた罪があるだけに、もう今回の『2202』の今後の成り行きに関して、いてもたってもいられない。

 実は今回アンドロメダは憎々し気に登場するが、土方は登場しない。ということは、ヤマト二代目艦長に彼が就任する可能性も大ということだ。

 極論すれば、私は土方がヤマト艦長になってくれさえすれば、あとはどのようなひどい出来になっても『2202』は許す(しかし、そうでなかったら許さない!)。

 正直なところ、私はヤマト・シリーズの中でもっとも好きなキャラクターが『さらば』の土方さんなのだ。一度はガトランティスに敗北し、本人が言うところの「生き恥をさらしながら」敗残の将としてあえて沖田の代打としてヤマトを指揮し、多大な戦果を収めていく姿は、いつ見ても涙を禁じ得ないものがある。

 前作『2199』で個人的にもっとも好きなシーンも、土方と親友・沖田との語らいの数々であり、これがあるだけで私は『2199』肯定派なのであった。

 テレサにしても、できれば今回は“女神”のオーラを湛えたままで全7章を貫いてほしいものと切に願っている次第だが、果たしてどうなるか……?

 今回、ガミラス側の地球駐在武官クラウス・キーマンが新キャラとしてスパイのごとく暗躍したり、また生死不明の宿敵デスラー総統がどのような形でお目見えするのかなども興味津々ではあるのだが、第1章の段階では何も見えてこない。こちらはただただ想像し、期待するのみである。

 一見すると職人肌ではあるが、その実『宇宙戦艦ヤマト復活篇』DC版のアニメーション・ディレクターとして大任を全うし、一方では『蒼穹のファフナー』シリーズ(04&15年)のような鬱アニメを見事なエンタメの域にまで高めた羽原監督の力量を、今は信じたい。

 思えば『さらば』が公開された1978年は、『未知との遭遇』(77年)や『スター・ウォーズ』(77年)といった海の向こうのSF超大作が黒船のごとく日本に押し寄せ、空前のSFブームが巻き起こった年でもあったが、そんな中で我が国は『惑星大戦争』(77年)やら『宇宙からのメッセージ』(78年)『火の鳥』(78年)『ブルークリスマス』(78年)などの竹槍SFで健気に応戦するもあえなく討ち死にしていく中(すべて個人的には愛してやまない作品だが)、『さらば』だけがそんな黒船SFに拮抗しながら人気を博し、またそれゆえに当時の中高生たちはアニメに夢と希望を抱き、ブームに拍車をかけていくことになったのである。
(少なくともあの頃、ヤマトはもとよりアニメをちゃんと見ていないと、学校のクラスで仲間外れにされるほどであった。部活動のイケメン・キャプテンも学年一の秀才少女も、みんなアニメを見て語り合っていた)

 あの頃、アニメは若者たちの流行の最先端だったのだ(ヲタクさんたちが本格的に台頭してくるのは、80年代に入ってからである)。

『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』こそは、そんな時代のトレンド(死語?)の象徴であり、単にアニメーションの域にとどまらず、当時の若者たちの映像文化全般に対する希望の星でもあった。そこに右だの左だのは関係ない。

 そして21世紀、ヲタク心もマニア情緒もごくごく普通のものとなって久しく、再び映画に音楽にとアニメ・メディアの数々がヒットチャートを賑わしていく一方、政治思想経済的には混迷の度を増していく今の時代に、『さらば』を原作とする『2202』が誕生した事実もまた、当時を知る世代としては何やら興味深く思えてならない。

 ホント、今は旅立つヤマトをいつも見送りつつ、その無事を祈り続けてきた藤堂長官の気分である。

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』、絶対に成功してほしい。
(文・増當竜也)

最終更新:2017/02/25 07:15
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