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『フィリピンパブ嬢の社会学』著者インタビュー

熱を入れすぎてパブ嬢とデキちゃった!? “研究者失格”の著者がのぞいた、フィリピンパブという社会

――本来、研究者としては、恋仲に発展することはNGですよね……。

中島 研究者としては失格です(笑)。大学の指導教官からも「早く別れなさい」と忠告されました。けれども、目の前で彼女が大変な状況に置かれているのに、研究なんかしてもしょうがない。研究は社会のためにはなりますが、知的好奇心の満足や論文の執筆など、いわば「自分のため」の要素が大部分。そうではなく、彼女のためにできることがあるなら、それをやるべきだと思ってしまったんです。

――しかし、そんな「失格」の視点から見えてきたのは、客観的な場所からは知りようのない、彼女たちの現実でした。

中島 フィリピンパブの裏には暴力団関係者がいるし、休みは月に2回しかありません。逃亡しないようにいつも監視されていて、自由に遊びにいくこともできない。ミカも、偽装結婚相手と同居していました。ただ、そんな過酷な現実よりも驚いたのが、彼女たちにも「日常」があること。普通の人なら耐えられないような毎日を送っているはずなのに、僕らと変わらずにリラックスしたり、笑ったりしながら過ごしていたんです。

――決して、過酷な生活に耐え忍んでいるだけではない、と。

中島 そう。僕自身も、ミカやその友達と生活を共にしていたのですが、初めは暴力団の影が怖くて脅えていたのに、だんだんとそれが日常になってしまいました。だから、本書を出版することが決まったときも、こんな普通の経験を誰が読むんだろう……と不安だったんです(笑)。

――ミカさんのビザ契約をめぐるトラブルのために暴力団と交渉したり、全然、普通の経験じゃありません!

中島 もう二度としたくないですけどね(笑)。ミカは急に偽装結婚の解消を迫られ、離婚すれば配偶者ビザを失い、不法滞在になってしまうという切羽詰まった状況だったんです。彼女を助けられる人は、僕以外、誰もいなかった。正直、僕だって暴力団のところになんて行きたくなかったんですが、彼女と付き合いながらフィリピンパブを研究しようとしてるのだから、責任を持とうと腹を決めたんです。数発殴られるくらいで済めば……と。

――イケメンすぎっ! ところで、純愛ノンフィクションのようにも読める本書ですが、フィリピンパブをめぐっては、入国制度や構造的な問題も浮き彫りになっていますね。

中島 さまざまな問題がありますが、不法入国で来日するフィリピンパブ嬢や、背後に暗躍する暴力団だけを糾弾すればいいという単純な話ではありません。そもそも、フィリピンパブという業態は、80年代に興行ビザが開放され、大量の女性が日本に送り込まれたことから生まれました。日本政府も、彼女たちが資格外活動していることを事実上黙認してきたんです。しかし、00年代に入って、アメリカから「性的搾取による人身売買」と指摘され、態度を一変させます。国では、この政策の変更を「効果的だった」と評価していますが、実態は偽装結婚や偽装パスポートでの入国など、地下に潜っているだけ。突然「受け入れません」と言われても、一度開放した流れは止まらないんです。


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