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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.421

伝説のプロデューサーと新鋭監督がガチゲンカ!! アウトロー映画『ろくでなし』に漂う不穏な熱気

伝説のプロデューサーと新鋭監督がガチゲンカ!! アウトロー映画『ろくでなし』に漂う不穏な熱気の画像3『ケンとカズ』(16)のドラッグディーラー役で注目された毎熊克哉。出番は多くないが、観客の印象に残る美味しい役だ。

 公開討論は最後まで平行線のまま、お互いに一歩も歩み寄ることなく決裂した形で終わりを告げた。個性が強すぎるクリエイター同士のケンカはガチだったことだけは、成り行きを見守っていた観客にもひしひしと伝わった。ろくでもない討論会だったわけだが、両者が火花を散らしながら完成させた『ろくでなし』がダメな映画かというと全然そんなことはない。撮影裏の不穏な空気をはらみつつも、キャスト陣はベストの演技、いやベスト以上の演技を見せている。監督が100%自由に撮りたいものを撮ることが許された恵まれた現場で傑作が生まれるかというと、必ずしもそうでない。その逆も然りということだ。

 作品としては欠点を持っていても、堪らなく魅力的なシーンや役者が瞬間的に放った輝きが脳裏に焼き付く映画もある。今回の『ろくでなし』でいえば、ラブホテルで枕営業をしようとしていた優子の前に一真が立ちはだかり、路地裏でお互いボコボコに殴り合う長回しシーンが忘れられない。それぞれの感情が爆発するこのシーンを撮る瞬間、監督とプロデューサーの軋轢など舞台裏のトラブルはいっさい関係なく、役に没頭した2人が共に殴り合うことで、そこに愛らしきものがあることが浮かび上がってくる。痛くて、無様で、かっこ悪くて、でも放っておくことができない愛しい映画。それが『ろくでなし』だ。監督とプロデューサーはケンカ別れしてしまったが、その分観客に愛される映画になってほしい。
(文=長野辰次)

伝説のプロデューサーと新鋭監督がガチゲンカ!! アウトロー映画『ろくでなし』に漂う不穏な熱気の画像4

『ろくでなし』
監督/奥田庸介 プロデューサー/村岡伸一郎 アソシエイトプロデューサー/山本政志、松本治朗
出演/大西信満、渋川清彦、遠藤祐美、上原実矩、毎熊克哉、大和田獏
配給/C・C・P 4月15日(土)より渋谷ユーロスペース、新宿K’s cinemaにてロードショー
(c)Continental Circus Pictures
https://www.rokudenashi.site

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