日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 東京で見つけたささやかな灯り
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.425

嫌な予感しかしない東京で見つけたささやかな灯り 石井裕也監督『夜はいつでも最高密度の青色だ』

yozora-movie02建設現場の日雇い労働者として働く慎二(池松壮亮)にとって、年上の同僚・智之(松田龍平)は気が許せる少ない仲間だった。

「俺って変だから」
「へぇ、じゃあ私と同じだ」

 昼は看護士、夜はガールズバーで働く美香と工事現場の日雇い労働者である慎二は偶然が重なり、度々顔を合わせることになる。憎まれ口を叩くこともあるが、お互いの心の空虚さを認め合い、少しずつ距離を縮めていくことになる。

 左目の視力がない慎二だが、その分勘が無駄に鋭い。「嫌な予感がする」と口にする度に、仕事仲間の智之(松田龍平)たちを閉口させてしまう。でも、残念なことに慎二の予感は的中し、慎二の周囲には次々と死が訪れる。雇用条件も不安定だし、東京五輪が終わった後の未来に明るい希望を感じることは難しい。看護士である美香も勤務先の病院で、どうしようもなく死の床に就く患者たちを見送ることになる。美香も慎二も、幼少期に母親と死別し、多感な中学生の頃に地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災を経験した石井裕也監督の内面世界を反映したキャラクターだ。どこにも安心していられる居場所を見つけることができずにいる美香と慎二だが、夜の街で共に青い月を見上げる瞬間がある。同じ月を見て、「きれい」と感じられる相手がいることが2人にはうれしく感じられる。ほんのささやかだが、暗い心の中に小さな灯りが点される。

123
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『24時間テレビ』強行放送の日テレに反省の色ナシ

「愛は地球を救う」のキャッチフレーズで197...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真