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『震災が起きた後で死なないために』発売記念インタビュー

「ルールは破る」登山家・野口健が提唱する、避難所に“テント村”という選択肢

「ルールは破る」登山家・野口健が提唱する、避難所に「テント村」という選択肢の画像3テントの中
「ルールは破る」登山家・野口健が提唱する、避難所に「テント村」という選択肢の画像4テントの前に設置されたタープスペースは、各家庭が趣向を凝らして活用していた

――そもそも最初は、テントを届ける物資援助を行う予定だったんですよね。

野口 はい。でも、テントを届けても、果たしてみんな生活できるのかな、という懸念があったんです。テントって、みんなバラバラに薄暗いところに張ると無防備だし、配るだけじゃダメだなと。そんな中、僕が環境観光大使を務め、旧知の仲である岡山県総社市の片岡(総一)市長から「テント村やりましょう!」とご提案いただいて、それで、「エベレストのベースキャンプか」と。エベレストのベースキャンプって、本当にこういう感じなんですよ。だいたい1カ月~1カ月半、長期間滞在するので、いかに快適に生活できるかっていうのを考えて僕らはベースキャンプを作るんです。それを再現すれば、いけるかと。

――とはいえ、物資援助とテント村運営では、責任の重さも違います。

野口 そうですね。でも、こういう緊急時は、早くやらないと意味がない。同時にテントメーカー(コールマンジャパン)にテントを発注して。そのテントが届くまでの間に、総社市の職員が場所探しをしてくれて、「益城町総合運動公園の陸上グラウンドが使えるよ」と。だから、すべてが同時進行。総社市は行政との交渉、僕らは物資。やるぞ、と決めたのは震災4日目。注文して3日目にテントが届いて、いったん総社市にトラックで送って積み替えて。5~6日くらいで準備は整いました。

――実際のテント村運営は、スムーズにいきましたか?

野口 いろいろと壁にぶつかりましたね。テント村ってほとんど前例がないし、みんなイメージが湧かない。そうすると、総合
運動公園の指定管理者(公的な施設の管理・運営を自治体に代わって行っている民間団体)から、テントで大丈夫かと。「熱中症は?」「死角で女性が暴行されたらどうするんだ?」とか、デメリットの部分ばかりがフィーチャーされて。あとは「公平性をどうするのか?」ということ。この公平性っていうのが、いろいろと厄介で。「車中泊は何人いるのか把握できていますか?」「すべての人が入れないなら、公平性に反するので、やるべきではないんじゃないか」とか。でも結局、避難所に入れないから車中泊しているわけで、「助けられるところからやりましょうよ」って。

――東日本大震災でも、公平性が邪魔をして、うまく救援物資が届けられなかったという話を聞きました。

野口 いろいろな人が、トラックで救援物資を持ってくるじゃないですか。でも、避難所の場合は、500人いたら500個ないとダメなんですよ。みんなに同じものを配らなければならない。バカバカしいけど、頑なにそうなんです。だから、せっかく遠路はるばる運んできても、避難所に拒否されるトラックがたくさんあって。テント村では、すべて「ありがとうございます」って受け取っていたので、ちょっとした市場状態でした。僕がマイクで「救援物資が届きました」ってアナウンスすると、みんなが集まってくる。そうすると、体育館から行政関係者が飛んでくるんですよ。「全員分ありますか?」って。「いや、ないですね。でもうち、早いもん勝ちなんで」って言うと、「ありえません!」って。でも、みんながみんな同じものが必要かといえば、そうではないですからね。

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