日刊サイゾー トップ  > 「性具+催眠音声」の可能性の追求
快楽の求道者の終わらない旅路

「アダルトグッズ+催眠音声」の可能性を追求するトランスイノベーションへの誘い

 そして、もうひとつが、ドライ。すなわち、催眠によってドライオーガズムに達することを目指したものである。男性が女性の絶頂に近い快感。すなわち、メスイキの快感を得る方法としては、エネマグラなどを用いた、アナルを使う方法が知られているところだ。個人差もあるだろうが、催眠音声によって得られるドライオーガズムは、またこれとは違った快感だ。身体にはまったく触れていないのに、身体の芯のほうから、射精ともアナルの快感とも違う、第三の快楽が押し寄せてくるといえばよいだろうか。

 そして、催眠音声には、さらに別のベクトルからの快感がある。基本的に催眠音声は受け身である。ストーリー仕立ての作品だと、わかりやすいが、さまざまな音で貶められ、蔑まれ、それが、みじめ気持ちいい快感となっていく。すなわち、現実のプレイでは不可能であろう領域で、究極のマゾヒズムを味わうことができるというわけだ。

 実のところ、そんな快楽には個人差がある。私は、数年前に初体験して以来、だいたいの作品で、あっという間に催眠状態になってしまう。一方で、試したことのある友人知人に話を聞くと体験談は様々だ。

「催眠音声で快感に浸って、ぐったりとしたまま眠りにつくのが気持ちいいんですよね」

 そういう人がいるかと思えば、

「いくつも買ってみたんですけど……全然、かからないんですよ」

 実は、どれだけ催眠音声を聞いても、まったく催眠状態になったことがないという友人の話には驚いた。これは、誰もがすぐに、催眠状態になってしまうものだと思っていたからだ。

 私の場合、自分でも危険だと思うほどに、すぐに催眠状態に入ってしまう。通例催眠音声は、導入の催眠~本編~催眠解除の構成になっている。ちゃんと最後は、催眠を解除してくれるようにはなっているのだが、私の場合、なかなか現実に戻ってくることができないのである。ともすれば、何時間も、心と身体が落ち着かない状態になってしまう。

 今回、取材するにあたって、当然事前に試しておこうと思った。ところが、ようやく試す時間ができたのが、取材当日の午前中。ボールギャグのほうを試しておこうかと思った。取材の相手が、著書があれば読む。映像があれば視聴する。そうした下準備がインタビューに欠かせないことはわかっている。けれども、イヤホンをして少しだけ音声を再生して、すぐに止めた。いや、正確にいえば聞いている時間は5秒もなかった。

「これは、ヤバすぎる……」

 聞いてしまうと、その日はずっと現世に戻って来られないような気がした。一気に、幻想の世界へと引きずりこまれる、甘美な禍々しさが、そこにはあった。実のところ、取材前日の夜に、いつもの人のよさそうなおじさんが「Amazonでーす」と、届けに来た時。すぐに、ほかの原稿の手を止めて試しておけばよかったかもしれない。でも、結果は同じだったと思う。むしろ、目が覚めてから、もう一度聞き直したい衝動に駆られて、大変なことになっていたのではないかと思う。

 それは当然のことだった。ボールギャグもオナホールも、どちらの音声も、すでにいくつもの作品を生み出している実力派の作家の手によるものである。

 ボールギャグの音声を担当した、キャンドルマンは、音を用いて女のコにレイプされる催眠を味わう『レイプ・サウンド・ガール♪』という作品で知られる人物である。

 少し前に、近作の『Best work for Sissy boi ~女々しいボクにピッタリのオシゴト~』を試したのだが、これはこれまで以上にケタ違いの作品であった。

 まず、総再生時間は140分という大長編。展開する物語のテーマはSissy。すなわち、男なのにチンポに負けて、女のコのようになり、社会的禁忌も犯していく快楽を描く作品であった。Sissyというジャンルは、欧米発祥のエロ概念で日本では、あまり馴染みがない。どの程度かといえば、コミケの3日目に純粋にSissyの同人誌を頒布しているサークルは、ひとつしかない。それほど尖った快楽を、2時間以上。山あり谷ありの展開で、没入させてくれていたのである。おそらく、ボールギャク音声を一瞬聞いただけで「やばさ」を感じたのは、私の脳内で、まだあの作品の感覚が残っていたからだと思う。

 そして、オナホールの音声を担当したB-bishopは数々のオナニーサポート音声で、やはり研ぎ澄まされた作品群で知られる人物だ。この人物はまず驚異的なの制作スピードでも評価が高い。だいたい毎月2本ペースで新作をリリースしているのである。おまけに、中にはシリーズとしているものもあるが、一つとして同じようなネタがない。毎回が、オリジナルなのである。そんな音声の特徴は、とにかくマゾヒスティックな快楽を喚起する言葉の応酬である。昨年、偶然『恐怖のアイアンメイデンはニガサナイ』を試してみて以来、私もいくつもの作品を購入している。女性の声を用いて、時には感情を込めて、時には無機質な感じで、とにかくありとあらゆる言葉を駆使して、責めてくるのである。

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 作品は、あくまでオナニーサポート音声である。けれども音だけの世界は実用のための興奮のさらに先の世界へと意識を誘う。精神をもいたぶり興奮させる効果を与えてくれる、またとないものだと私は思っている。

 最初に聞いた『恐怖のアイアンメイデンはニガサナイ』の印象は今でも強烈だ。なにしろ、実用のためのオナニーサポート音声として試したはずが、ぐったりするほど疲労と、何か大きな仕事をやり遂げたような満足感をくれたからだ。

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