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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.452

ダメ人間の肥大化した承認欲求が巨大怪獣に変身!? アンハサ主演作『シンクロナイズドモンスター』

脱いでよし、歌ってよしのアン・ハサウェイが製作総指揮&主演した、おかしな怪獣映画『シンクロナイズドモンスター』。

 アン・ハサウェイ主演の『ゴジラ』が企画されているという噂が流れてきたのが2~3年前。スペイン出身の新鋭ナチョ・ビガロンド監督のオリジナルストーリーによるぶっ飛んだ内容になるらしいと聞いて、「う~ん、大丈夫か?」と思っていたところ、当然ながら東宝からクレームが入った。その結果、怪獣や物語の設定は大幅に変更された模様。そんなこんなで、いろいろあった末に完成したのが、カナダ映画『シンクロナイズドモンスター』(原題『COLOSSAL』)。SF映画の古典的名作『禁断の惑星』(56)と不条理ドラマ『マルコヴィッチの穴』(99)を掛け合わせたような、懐かしさと奇妙さが漂う超ユニークな怪獣映画として、日本公開される運びとなった。

 物語はこんな感じ。主人公のグロリア(アン・ハサウェイ)はNYでそこそこ活躍しているウェブ系のライター。ところが、グロリアの書いた記事が大炎上を起こしたことから、グロリアは会社をクビになってしまう。30歳を過ぎて無職となり、毎晩のように呑み歩くグロリア。同棲中の恋人ティム(ダン・スティーヴンス)から三行半を突き付けられ、アパートから追い出されるはめに。生まれ故郷に帰ってきたグロリアは、幼なじみのオスカー(ジェイソン・サダイキス)が営むバーでウエイトレスとして働き始めるも、やっぱり朝まで呑んだくれる生活。そんなある日、韓国のソウルに巨大怪獣が現われ、街で暴れ回っている映像をテレビのニュースが伝えた。その怪獣を見て、グロリアはびっくり。頭をよく掻く彼女の癖を、怪獣はまったく同じように真似ていたからだ。

 

韓国のソウルに出現した巨大怪獣。二本足で歩行するあたり、『ウルトラマン』シリーズの怪獣たちをどことなく思わせる。

 理屈は分からないが、小さい頃から遊んでいた近所の児童公園の砂場にグロリアが足を踏み入れると、巨大怪獣がソウルに出現するらしい。砂場でグロリアが踊れば、怪獣もソウルで地響きを立てて踊る。酔ったグロリアが砂場でコケれば、怪獣もコケてビルを崩壊させてしまう。自分だけの秘密にできず、オスカーを公園に呼び出して打ち明けたところ、今度は何と巨大ロボットも出現! オスカーの動きに合わせて、この巨大ロボットは動き始める。グロリアもオスカーも首をひねるが、それ以上にソウル市街は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなってしまう。

 こんなヘンテコな怪獣映画を生み出したナチョ・ビガロンド監督は、1977年のスペイン生まれ。パソコンの画面上で物語が進んでいく前作『ブラック・ハッカー』(14)も、かなり風変わりなテクノサスペンスだった。オムニバスホラー『ABC・オブ・デス』(12)では、日本の誇る奇才・井口昇監督らと競作。低予算を逆手にとった奇抜なアイデアで勝負する作風は、『片腕マシンガール』(08)が世界的なヒットとなった井口監督にも共通するもの。ひどく乱暴に言えば、“スペインの井口昇”がハリウッドのトップ女優と撮った低予算怪獣映画が『シンクロナイズドモンスター』ということになる。『ダークナイト ライジング』(12)でのキャットウーマン役、『ラブ&ドラッグ』(10)での脱ぎっぷりも良かったアン・ハサウェイの守備範囲はこちらの想像以上に広かった。ぜひとも、井口監督の新作にも出演してほしい。

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