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『水曜日のダウンタウン』

「フューチャークロちゃん」が暴いたゲスで哀れで愛らしい男・クロちゃんは平成の“寅さん”だ!

 

■「これは見てられへんわ」

 

 その夜遅く「夢が叶う」という設定のパワースポット神社に、小林とタクシーで向かう。車内でふざけながら手をつないだクロちゃんは、手応えを感じているようだ。

 お参りを済ませた後「あっちにベンチあるから座りましょう」と境内裏にある広場に誘う小林。

 ベンチまであと5メートル。「なんか飲み物持ってくればよかった」と、わざとらしく立ち止まる小林。先導して歩いていたのに、急にクロちゃんを先に行かせようとする。この神社に行こうと誘ったのは小林だ。

 ちなみに前日「フューチャー」が予言したツイートは、クロちゃんが落とし穴に落ちるというもの。その落とし穴を、クロちゃんはこの日一日警戒していた。

 小林は正直、仕掛け人としては失格な下手くそ具合だ。しかし、この下手くそ加減がドラマを生む。

 ベンチの絶妙な距離で、立ち止まって先に行かそうとするれいちゃまに、何かを察してしまったクロちゃん。

 ここで来たかと。しかも、明らかにその穴へ誘導してるのは愛しのれいちゃまだ。

 頭の中がこんがらがる。もはや彼が心配してるのは、穴に落ちることでも、これが何の仕事なのかでもない。この恋が終わってしまうのか。れいちゃまとのは思い出は、全て「嘘」だったのかという怖さ。

 嘘のツイートを続けていた男が、自らに迫り来る「嘘」の予感に苦しむという、2017年の日本でリブートされたイソップ童話『狼と羊飼い』。

「一旦座って話しましょう」と、不自然中の不自然な誘導で押し切ろうとする仕掛け人、兼・恋愛対象の小林。

「ちょっと待ってね、れいちゃま……ちょっと待ってね……」
「そうね、座らないといけないよね……」

 プライベートな想いと、芸人としての責任感が混在する。

「もしもそうだったら、ちょっと自分の中で整理をしとかないといけないから」

 映画などでよくみる「身内が真犯人」だったシーンを思い出す。

 それに対する小林の「あっ、そうなんだ。何かちょっとよくわかんないけど」といういなし方は、無関係のこっちから見たら相当だが、恋する男にとっては「嘘であってほしい」麗しのれいちゃまだ。わずかな期待を込め、嘘つき野郎が、嘘抜きで語りだす。

「俺はれいちゃまのことを本気でいいなって思ってて、この一週間いいなぁって思ってたから、俺はれいちゃまのこと好きだなっていう……好き……これだけははっきり言っとくね」

 告白。トーンの優しさから、本当に好きなことが伝わってくる。

 おそらくだが、もう彼の中では結論は出ていたのだろう、だからカメラが回ってることもわかってたのだろう。

 小林はおそらく、怪物に告白されてる自分という見え方を意識していたはずだ。だから、ぎこちない。

 しかしここ最近、当たり前のように職場も移動中も、そして自宅にもカメラが仕掛けられている彼にとっては、もはやそんな機器の存在など苦でも屁でもない。

 穴に落ちる前に、どうしても気持ちを伝えておきたかったのだろう。変なアカウントの出現と同時に、並行して流れていた夢のような時間が土に埋もれる前に。

 眼科に行くべき前提のもとに言わせてもらえば、業火に身を焼かれようとも大切な人を守ろうとする英雄見えた。

 おそらく世の多くの冴えない男達たちは、黒川がいろいろ最低だと認識しつつも、得体のしれないシンパシーを感じただろう。

 想いを全て吐き出し「じゃあ、座って、しゃべろうね」そう言ってゆっくり歩き出す英雄。

 おそらく、しゃべるどころか座ることもできないことを、彼は知っている。

 そして、3歩歩いて、落ちた。今、渾身の告白をした女の誘導する罠へと。

 落ちた獲物を確認するでもなく、なんなら落下音にうるさそうに耳を塞ぎ、女は闇に消えた。いや、クロちゃんの中では死んだのかもしれない。

 思わず「これは切ないね」と松本。「いいこともあるからね」と冗談めかしながらもフォローする。モテの代表のようなスタンスのYOUも「クロちゃん頑張って!」と応援するほど。

 前日に1万キロカロリーも摂取させられた影響で4キロ近く太ってるからか、這い上がる姿も苦しみに満ちている。上がってきた顔は、ドッキリを受けた人としてはあり得ないほどの真顔だ。スタッフも誰もいない。地獄。

「これは見てられへんわ」と悲しく笑う松本、「せつない、ほんと」と高橋みなみと呟く。

 2人で来たタクシーの後部座席に、今は一人、流れる街頭の灯が黒川の顔を照らして流れる。『タクシードライバー』(1976)のロバート・デ・ニーロ演じるトラビスのようだ。流れる曲はもちろん「レイニーブルー」。「終わったはずなのに~」という歌詞もぴったりだ。

 失意の中、一人暗い部屋に戻るが、内側に仕掛けられたカメラが当たり前のように、その逆光の黒川を迎え撃つ。部屋で一人、おそろいで買ったバカラのグラスを見つめる、悲しみに浸る。

 この悲しさがクライマックスを迎え、スタジオの空気(観客は引いているかもしれないが少なくとも演者は)が戸惑いながらも感動に染まり上がった瞬間、

「あ、もしもしサエちゃん?」

 と、違う女をラム肉の店に誘うクロちゃん。スタジオの女性客が待ってましたとばかりに悲鳴を上げる。

 予想を超えるクロちゃんのメンタル。「元気でよかった」と思う心と「このゲスが」と罵る心が入り混じる。

 しかし、失恋直後なのに、急遽課された予言での指令に従い、延々と朝までモノボケを続けるクロちゃん。しかしなんだかんだあって、クロちゃんに罰ゲームが決定して企画が終了、番組もこのまま終了……かと思われた!

 

■まさかのオチ

 

 だが、ここからVTRは急展開。罰を受けるらしく、アイマスクにヘッドホンというおなじみスタイルで連れていかれるクロちゃんの耳に流れるのは、あの「レイミーブルー」いやさ「レイニーブルー」。

「思い出すからもぉぉぉぉ! やっと忘れてきたのにぃぃぃ!!」涙が止まらない。

「ほんとに好きだったから、れいちゃまのこと!」本気で泣いてる。

 これほど「レイニーブルー」が似合う場面を筆者は知らない。荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」や大塚愛の「さくらんぼ」と同じような、間違ったヒットの仕方をしそうな予感すらある。

 ここで、VTR開けてスタジオ。

「今日はなんだか、ふわふわした気分」と「フュチャークロちゃん」が前日にツイートしているらしい。最後の予言ツイートだ。

 この説(何の説だか、もはやわからないが)をプレゼンするサバンナ高橋に「スタジオの上をご覧ください」と言われ全員が見上げた先には、照明に紛れて天井高く吊るされたクロちゃんの姿が! もちろんアイマスクとヘッドホンで正装し、知覚は奪われている。

 悲鳴。もう誰も笑っていない。松本も「もうこんなんいややわ」と体をすくませている。

 収録のはるか前から吊るされていたらしい。2時間特番でしかも収録……観客が入るはるか前ということは、少なく見積もっても4時間以上は前だろう。

 過去のスペシャルでは、「出演者の声、全部モノマネタレントが演じてる」「空気読めない女性タレントは裏で芸人が指示してた」などの大オチで驚かせてくれた同番組だが、今回も仕上げて来た。

 その「物体」が降りてくる。心おきなく絶叫する観客。「それでキャー言われるのもかわいそうやけどな」との松本の正論はもっともだ。

「(目隠し)一生取っちゃだめ」と言われて「まだ光は見たい!」と即座に返すクロちゃん。ゲスや嘘っぷりばかりが注目されているが、これだけの目に遭いながら瞬時にこのコメントを出せるところが、この人のすごいところだろう。

 収録終了後、スタッフに薄々仕掛け人だと感じて、なんで本気で好きになったんですかと聞かれ「惚れた男の弱みだよ」と、まさに寅さんのごとくナルシスティックに嘆いた直後、「『サエちゃん』って誰なんですか?」と唐突にぶつけられ、一瞬とまどった後、「……誰ですかね」と、冷酷な目でシラを切るというオチまで見事な真っクロさ。

 これからも『水曜日~』で彼がどんな地獄を見続けるのか、クロちゃんの黙示録に期待したい。
(文=柿田太郎)

最終更新:2017/12/30 05:50
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