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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

ドラマ界にも吹き荒れる“乃木坂旋風”! 西野七瀬『電影少女』に注目せよ

 特にエンドロールで流れるスチール写真が素晴らしい。

 映像は静止画で西野の映像は止まっているのだが、水や湯気といった周囲のものは動いているという不思議なものとなっている。これは時間の止まった少女としてのアイを見せる上で見事なアプローチと言えよう。監督の関和亮はPerfumeのMVを通して女の子の身体を人工的なアンドロイドのように見せてきたのだが、本作でも生身の女の子を漫画やアニメのキャラクターのように見せる手法は見事に生きている。

 そして、西野七瀬も天野アイに完璧になりきっている。

 最初に西野が天野アイを演じると知った時は正直、イメージと合わないなぁと思った。

 同じ乃木坂46ならショートカットで少年性も見え隠れして、本人も漫画好きの生駒里奈の方がいいのではないかと思った。しかし本作のために髪を切って登場した西野七瀬を見た時は驚いた。そこには、本物の天野アイがいると思った。

 女優としては野島伸司脚本のドラマ『49』(日本テレビ系)などに出演している西野だが、『電影少女』以前で、鮮烈な印象が残っているのは、映画『溺れるナイフ』などで知られる山戸結希監督が撮った西野のソロ曲のMV「ごめんね ずっと…」だ。

 このMVは、アイドルとして活躍する西野七瀬と、アイドルにならずに看護師になった西野七瀬の姿が同時に映し出され、幼少期や学生時代の映像や写真が挟み込まれるノンフィクション形式のMVだ。西野の哀しい歌声もあってか、なんだか見てはいけないヤバイものを見てしまったように感じて「あれは何だったのか?」と、今でも思い出す。

 MVの印象が鮮烈だったため、西野はもっと生々しい演技をする方向に女優として向かうのではないかと思っていた。

 だが、初主演となった映画『あさひなぐ』では『電影少女』にもつながるようなコミカルな姿も見せており、そして『電影少女』では、漫画的なキャラクターを演じるツボを完全につかんだように見える。

 漫画的なキャラクター性と女としての生々しい色気が、西野七瀬の中には共存している。

 かつてなら漫画の中でしか成立できなかった美少女・天野アイは、西野七瀬というアイドルの身体を借りることで見事、現代に蘇ったのだ。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2018/02/13 21:00
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