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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.474

女性向け性サービスの需要はさらに高まりそう! 松坂桃李が『娼年』でセックスセラピストを熱演

松坂桃李が男娼を演じた話題作『娼年』。SEXなんて誰とヤッても同じと思っていた主人公は、様々な女性たちと出逢い、SEXマスターへと開眼する。

 ハリウッドの実力派女優ジェシカ・チャスティンが主演した政治サスペンス『女神の見えざる手』(17)で、凄腕の政治ロビイストを演じたジェシカが密かに愛用していたのがエスコートサービスだった。政界や財界の大物たちを相手に神経をすり減らす業務に追われる彼女は、恋人をつくる時間と心の余裕がない。そんな彼女にとっての唯一の息抜きが、エスコートサービスと過ごすホテルでの一夜だった。松坂桃李が主演した『娼年』は東京が舞台だが、高級娼夫に扮した松坂を指名する女性客たちも、ジェシカと同じようにストレスの多い日々を過ごしているに違いない。

 直木賞作家・石田衣良が2001年に発表した同名小説を映画化したのは、乱交パーティーに集まる男女の本音を赤裸々に描き出した『愛の渦』(14=記事参照)が大反響を呼んだ三浦大輔監督。今回の『娼年』は女性専用の高級コールクラブを題材にした“裏風俗”もの第2弾だ。2016年に上演された舞台版に続いて、松坂桃李が主人公リョウ役を演じている。有名大学に在学するリョウだが、講義を聴講するのに飽き、就職活動にも興味が持てず、毎晩下北沢にあるバーでバーテンとして働いていた。バーに客として現われたゴージャスな大人の女性・御堂静香(真飛聖)に誘われ、リョウは退屈しのぎと好奇心から男娼の仕事を始めることに。年上の女性たちとベッドを共にし、リョウの世界観は大きく変わり始める。

 時給1万円の娼夫として仕事をスタートしたリョウだが、意外な才能を発揮することになる。ベッドイン前から、リョウの前戯はすでに始まっている。リョウを指名した顧客と、まずはレストランで食事と会話を楽しみ、相手をリラックスさせる。爽やかな笑顔と学生らしい何気ないおしゃべりで相手の緊張をほぐせば、女性はすんなりと心のドアを開いてくれる。ホテルに着いたリョウは、さらに優しいキスと全身への愛撫を重ね、顧客の体を丁寧に問診する。男と同等に、もしくは男以上にハードに働く女性たちの溜め込んでいる性欲とストレスを、SEXしながらゆっくりと吐き出させていく。リョウは働く女性たちにとって、優れたセックスセラピストのような存在だった。

秘密クラブを経営する御堂静香(真飛聖)。リョウにとっては母親と同じくらいの年齢だったが、アダルトな雰囲気にリョウは魅了されていく。

 リョウもまた女性の内面を覗くことで、それまでの女性観を改める。御堂静香と出会うまでは、SEXは単調なピストン運動、女性との付き合いも面倒くさいものと決め込んでいたが、根が几帳面なリョウは娼夫という仕事に正面から向き合い、女性たちが実に様々な欲望を抱えていることを身を持って体感する。多くの女性たちの欲望は、本人の業から発せられるものだろう。その欲望、業の深さにビビって逃げ出す新人男娼は少なくなかったが、リョウは逆だった。他人には言えない恥ずかしい願望やトラウマを抱える女性のことがかわいらしく思えて仕方ない。年上の女性の笑いじわや肉体の柔らかさも、リョウにはとても愛おしく感じられる。

 リョウ役を演じた松坂桃李は、本作の中で様々なプレイに挑戦する。優しいSEXだけでなく、おしゃれなお姉さんっぽいヒロミ(大谷麻衣)は後背位で激しく責める。夫以外の男に抱かれると興奮するという若妻・紀子(佐々木心音)はいやらしい言葉責めでいたぶってみせる。和服が似合う老女(江波杏子)のスイートスポットも隈無く探索する。顧客の想像を上回る熱いサービスが、リョウのモットーだった。御堂静香にスカウトされて間もないリョウだったが、顧客満足度No.1の売れっ子娼夫となっていく。

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