日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 松坂桃李がセックスセラピストを熱演
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.474

女性向け性サービスの需要はさらに高まりそう! 松坂桃李が『娼年』でセックスセラピストを熱演

 松坂桃李は不倫サスペンス『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)でも蒼井優を相手にベッドテクニシャンぶりを見せていたが、舞台版『娼年』の公演直後の撮影だったことも多分に影響していたそうだ。9人の女優たち+αを相手に映画版『娼年』でも再び過激な濡れ場を演じながら、松坂本人に清潔感があり、何よりも芝居に対するマジメさが伝わってくるため、どんなにエロい濡れ場を演じていても“汚れ”のイメージが感じられない。行定勲監督の『リバーズ・エッジ』(18)では二階堂ふみがまん丸なおっぱいをぺろんと見せてくれたが、現代人の繊細な内面や関係性を描く上で、ヌードシーンやSEX描写は避けては通れないもの。作品や役に応じて、ヌードOKなプロフェッショナルな俳優たちが増えつつあることを歓迎したい。

出産後は夫から女として見てもらえないことを嘆く主婦(荻野友里)。女性キャストの多くはオーディションで選ばれている。

 本作を観ていて思い出すのは、若き日のリチャード・ギアが主演したポール・シュレイダー監督作『アメリカン・ジゴロ』(80)だ。リチャード・ギアはLAの人気男娼役だが、彼は多くの女性たちとベッドを共にしながら、自分にとっての理想の女性を追い求め続けていた。人類の祖アダムの抜き取られた肋骨からイヴが生まれたように、自分の欠けた魂をそっくり補ってくれる運命の女性を探し、女体を渡り歩いていた。松坂桃李が演じるリョウも、それに近い。リョウの場合は幼い頃に死別した母親の面影を求めて、男娼の仕事に励んでいる。リョウにとってのSEXは、母親の温もりを求めることであり、亡き母との対話でもあり、母親と近親相姦するような倒錯性もそこには含まれている。

 リョウが所属する秘密クラブでは、痛みによってのみ快感が得られる真性マゾヒストのアズマ(猪塚健太)や耳の不自由な少女・咲良(冨手麻妙)といったマイノリティー側の人々が働いている。クラブを経営する御堂静香もまた、誰にも言えない秘密を抱えている。石田衣良が2008年に書き上げた続編『逝年』では、性同一性障害を抱えるアユムがリョウたちの新しい仲間として加わることになる。男と女を分ける大きな大きな性の谷間には、様々な人々が棲息し、谷の合間を行き来している。そんな谷間の住人となったリョウはSEXを通して人間の言語化できない本音や素顔に触れ、退屈を持て余していた少年から相手の心の傷を思い遣る青年へと成長を遂げていく。様々な性を肯定することは、すべての生を祝福することでもある。やはりリョウは優れたセックスセラピストだといえるだろう。
(文=長野辰次)

『娼年』
原作/石田衣良 監督・脚本/三浦大輔
撮影/Jam Eh I(田中創)
出演/松坂桃李、真飛聖、冨手麻妙、猪塚健太、桜井ユキ、小柳友、馬渕英里何、荻野友里、佐々木心音、大谷麻衣、階戸瑠李、西岡徳馬、江波杏子
配給/ファントム・フィルム R18+ 4月6日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
(c)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会
http://shonen-movie.com

 

『パンドラ映画館』電子書籍発売中!
日刊サイゾーの人気連載『パンドラ映画館』
が電子書籍になりました。
詳細はこちらから!

 

最終更新:2018/04/06 19:06
12
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『24時間テレビ』強行放送の日テレに反省の色ナシ

「愛は地球を救う」のキャッチフレーズで197...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真