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『ガチ星』全国公開記念クロスインタビュー

このドロ臭さは、「競輪版ロッキー」と呼びたい!! 『ガチ星』が生ぬるい邦画界に追込みを掛ける

「サガミオリジナル」のCMでカンヌ国際広告祭金賞を受賞した江口カン監督。福岡在住ながら、国際的に活躍している。

■ダメ人間を甘やかしてしまう、福岡という街の恐ろしさ

 競輪学校では、クランクイン前に他の若手キャストと共に1カ月の合宿特訓。10キロ体重を増やし、無精ひげを伸ばし、より濱島へと近づいていった。また、東京で暮らす安部に対して、福岡で映画の準備を進めた江口監督はスマホでダメ出しを続けたという。

安部「毎日、濱島になりきった不機嫌な表情を、LINEで江口監督に送り続けたんです。撮影前はそれが日課になっていました。たまに江口監督から返事がこなくて、深夜2時すぎまで寝ないで待っていたこともあります」

江口「ごめん、その晩は酒を呑んでてLINEを返しそびれた(笑)。LINEでのやりとりでの演出は初めてだったけど、離れた場所にいる役者に対して、これは意外と有効だと分かり、他の作品でもやっています。要は一度掴んだ役のイメージを撮影当日まで忘れさせないことが肝心なんです」

安部「競輪学校近くの登坂コースを登るのもキツかったし、バンクを周回するシーンは何度も何度もリハが続くのでヘトヘトになり、先導するプロの競輪選手に付いていくだけで必死でした。ドラマパートでも江口監督から厳しいダメ出しが続きましたが、厳しい分だけ江口監督やスタッフのみんなが『ガチ星』に熱い情熱を注いでいることを実感できたんです」

 福岡は気候が穏やかで、美味しい食材に恵まれ、気のいい性格の人間が多い。だが、そんな居心地のよい環境に甘えて、『ガチ星』の主人公・濱島は救いようのないクズ人間へと堕ちていく。ゲロを吐き、汚物まみれとなる濱島を目覚めさせるのは、家族や友人たちの優しさではなく、競輪学校で出会った天才的レーサー・久松(福山翔大)というライバルの存在であり、生と死の境界線ギリギリに自分は立っているのだというシビアな現実認識だった。甘さを排除した展開に、地元・福岡にいながら第一線で活躍を続ける江口監督の並々ならぬ想いも感じさせる。

江口「7年ごしで『ガチ星』を完成できたことで、これからも福岡を拠点に無名の俳優たちを起用した映画を撮っていきたいという気持ちが強まりました。すでに何本かは準備中です。東京の人にも『へぇ、こんな映画もあるんだ』と外国映画を観るような感覚で楽しんでほしい」

安部「蜷川幸雄さんが演出する舞台に出たときに、『お前は体がデカいんだから、何もせずに堂々とそこに立っていればいいんだ』と言われたんですが、『ガチ星』の濱島を最後まで演じきったことで、蜷川さんの言葉を実感できたように思います。役になるための準備を充分した上で、本番では演技に頼ることなく、役そのものになりきっていることが大事なんだなと。他の監督の作品にもチャレンジし、江口監督にまた呼んでもらえるような俳優になりたいですね。ここからがスタートです」

 豚骨ラーメンのようにクセがあり、辛子めんたいのようのホットな映画『ガチ星』が完成した。面白い映画に飢えていた大人の観客たちの食欲を充分に満たすに違いない。
(取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能揚)

『ガチ星』
監督/江口カン 脚本/金沢知樹
出演/安部賢一、福山翔大、林田麻里、船崎良、森崎健吾、伊藤公一、吉澤尚吾、西原誠吾、博多華丸、モロ師岡
配給/マグネタイズ 5月26日(土)より新宿K’s cinema、小倉昭和館ほか全国順次公開 
(C)2017 空気/PYLON
http://gachiboshi.jp

●江口カン(えぐち・かん)
福岡県出身。九州工科大学画像設計科卒業。CMディレクターとして手掛けた「ナイキ ジャパン」「おしい!広島」「スニッカーズ」などのCMが人気を集める。2007年から3年連続で「カンヌ国際広告祭」受賞。13年には博多華丸、富田靖子主演ドラマ『めんたいぴりり』(テレビ西日本)のディレクターを務めた。15年には続編『めんたいぴりり2』がオンエアされ、2作連続で日本民間放送連盟賞優秀賞を受賞。16年はNHK大河ドラマ『真田丸』番宣ムービー『ダメ田十勇士』が話題に。19年1月に映画『めんたいぴりり』が公開予定。

●安部賢一(あべ・けんいち)
大分県出身。高校卒業後、競輪選手を目指すが競輪学校に合格できずに断念。役者の道へ進むも、オーディションは落選ばかりという下積み生活が続いた。舞台では蜷川幸雄演出「タンゴ・冬の終わり」「ひばり」(シアターコクーン)、映画では北野武監督の『監督・ばんざい』(07)や『アキレスと亀』(08)などに出演している。『ガチ星』は初めての主演作。

最終更新:2018/05/23 19:23
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