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ZORNとKOHHが共演した幻の曲も特典に! 上野アメ横発ヒップホップCD屋「CASTLE RECORDS」の大きすぎる功績

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東京・上野アメ横センタービル「CASTLE RECORDS」のG.O

 2009年に東京・上野のアメ横センタービルにオープンした、国内のヒップホップの作品を主に取り扱うCDショップ「CASTLE RECORDS」。現代の音楽聴取の主流のひとつは言うまでもなく、配信/ストリーミングである。レコード/CDショップに足を運ぶのは、ごく一部のコアなファンであろう。

 だが、そんな時代であっても、CASTLE RECORDSがこの12年間に国内のヒップホップ・シーンで果たしてきた功績は重要だ。ラッパーZORNが3連覇を果たしたことで知られるMCバトルのイベント「THE 罵倒」を主催し、現在活況を呈するMCバトルの礎を築く一方で、いち早くYouTubeを積極的に用い、ヒップホップ・メディアの役割を果たした。

 そうした活動において、スポークスマンとなったのがラッパーG.O。そして、CASTLE RECORDSがこのたび、上野からほど近い湯島に移転、4月5日にCDショップ&バーとしてリニューアル・オープンした。そこで、約2年半ほどの“合宿”から帰還したG.Oに、CASTLE RECORDSの歴史と今後の展開について話を訊いた。

なぜ上野アメ横に店を構えたのか

――まず、20年10月に“戻ってきた”ということですが、周りを見渡して率直な感想はどうですか?

G.O 舐達麻の今の人気とか、すごすぎて理解するのに少し時間がかかりました(笑)。いや、彼らは昔からカッコいいんですけど、あのアングラなスタイルじゃないですか。「サイゾー」が取り上げるのはわかりますけど、「『GQ japan』が舐達麻を取り上げるのはどういうこと?」って。そうそう、「サイゾー」(20年4・5月合併号)の「実録・狂気の関西ラップ」を“中”で読もうとしたら、ページが全部黒塗りにされて読めなかったんですよ。めちゃ読みたいのに。で、頑張って黒塗りを削ったら、ジャパニーズマゲニーズが出てきて、“外”では彼らが人気なんだな、と確認したりしていました。

――ちょっといい話ですね(笑)。

G.O それと、やっぱり昔から知っているZORNの活躍はすごく嬉しいです。自分たちもZORNも葛飾が地元で、自分は堀切菖蒲園、ZORNは新小岩。19年に「かつしかシンフォニーヒルズ(葛飾区文化会館)」という成人式をやるような会場でリリース・ライヴをやるらしいと“中”で知って驚きました。1000人規模以上の会場なんで。

――ZORNは昨年、『新小岩』という素晴らしいアルバムを出しましたね。

G.O 自分が出てきた10月の後半にワンマン・ライヴを日本武道館でやりましたよね。彼が自分たちを誘ってくれて観に行きましけど、ゲストにあれだけのラッパーを一堂に呼んで、堂々とステージに立つ姿を観て感動しました。東東京の下町出身のラッパーは意外に多いと思うんですけど、そうしたスタイルを変えずに武道館まで行ったのは衝撃だった。4回ぐらい泣きましたもん。

――そして、09年に上野のアメ横センタービルにオープンしたCASTLE RECORDSが湯島に移転して、CDショップ&バーとして4月5日にリニューアル・オープンしました。

G.O 時代に逆行する形でCD屋を始めさせてもらいましたが、運営をしていくこはとても大変で、事業のすべてをとりまとめてくれている代表の牧野(寛史)がいなかったら、お店を残すことはできなかったと思っています。バーに関しては以前にも飲食業をやろうという話があったのですが、自分が“合宿”から戻ってきたタイミングに合わせて、代表がすべての段取りを進めてくれていて、CD屋とバーが一緒になったお店を開くことに決まりました。CD屋とバーを一緒にやっちゃうっていうアイディアを“中”にいるときに手紙で知らせてくれたのですが、そのときはもう間違いないと興奮しましたね。その新しいお店で自分はバーテンをやらせてもらうことになっているんです。CASTLEを始めた当時と比べて、今はCDがグッズ的ですよね。CDを買う人は、ファンの方はモチロンですが、フィジカルが好きな人や、CASTLEでしか付かない特典を聴きたいコアなファンの方など、ありがたいことにサポートしてくれる方々がいます。でも、やはりそれだけをこの先もずっと続けていくのはとても大変なことなので、新しい事業と融合させたこの事業展開は間違いないと思っています。

――なるほど。

G.O もともと、自分は2000年代前半ぐらいからICE DYNASTYというグループでラップをしていたんです。妄走族が先輩という感じで渋谷の円山町、宇田川町で遊ばせてもらいながら、オフィシャル・アルバムを出す前に自分たちのミックスCDをストリートで出していた。D.O君がやっていたBOOT STREET(宇田川町にあったCDショップ)にCDを置かせてもらっていましたし、中高生ぐらいからヒップホップのレコードも買っていた。かつては上野に、CISCO、disk union、HMVがあってレコードも買えたんですけど、時代の流れで全部なくなってしまって。CASTLEのメンバーはみんな葛飾出身で、自分たちにとっては縁のある場所が上野だったから、そこで何かやりたかったんです。

――CASTLEは上野にあったのが大きいですよね。

G.O それはデカいと思います。ある時期から、店頭よりネットでの販売数のほうが多いだろうけど、上野だったから実店舗をやり続けたというのはあったと思います。新宿周辺の人が新宿に行く、世田谷の人が渋谷に出る、埼玉の人が池袋に出るのに近い感覚で、自分ら下町の人間にとっては上野なんですよね。CASTLEが店を構えてきたアメ横センタービルも、中高生の頃から買い物するときに来ていたので。だけど、09年にオープンする時点で、すでにCD屋は時代に逆行した商売だったと思います。それでも、ある会社のいち事業として出資してもらって、自分と現在は代表の牧野と2人で始めました。でも、まったく無知の状態で始めたんで、すげぇ大変で。儲からなさすぎて社長から「事業として成立しないから、すぐ閉める」と言われたんですけど、2人とも無給で働く時期なども経てお店を継続しました。自分は途中数年間も店を留守にしてしまいましたが、代表が店を守ってくれたお陰で12年間やってこれました。

――代表が幼馴染の牧野さんということですが、G.Oさんのポジションはなんでしょうか?

G.O 自分は看板というか、宣伝、広報担当ですね。

――スポークスマンですね。G.Oさんといえば、YouTubeチャンネル「CASTLE TV」のひょうきんなキャラクターでも知られていました。今考えると、YouTuberの走りですよね。コントなんかもやったりしていました。

G.O そういうアイディアを思いつくのは、CASTLEのブレーンである牧野なんです。自分は表に出て何かをやるということが得意で、アイディアは代表がいつも考えている。とにかく、お金もないから、アイディアで宣伝するしかないじゃないですか。それで、YouTubeをああいう使い方してやっていた。ただ当時、一応、妄走族の後輩として“ストリートのハードコア・ヒップホップ”で売っていたので、「そういうお笑い系のキャラでいいの?」って言われたことはありました。みんなウケてたんですけどね(笑)。それが当時は新しかったと思うんです。例えば、今や漢(a.k.a. GAMI)君はあの面白いキャラが一般に知られているけれど、2010年代前半ぐらいまでは、新宿の超イルなヒップホップ・グループの怖いボスというイメージしかなかった。だけど、「CASTLE TV」で漢君のひょうきんな一面も撮影して、アルバム『MURDARATION』(12年)を買った人に特典のDVD『CASTLE TV 番外編 -漢と宿と粋と情-』を付けたんです。そのとき、漢君サイドから一瞬クレームが来ましたからね。「これは、アリなの?」と。でも自分たちは、漢君のこういう一面がわかることはファンも嬉しいし、良い方向に向かうと感じていたから、付けさせてもらって。

――今年1月、「CASTLE TV」は久々の更新があり、MC漢の自宅でバーベキューしながらインスタライブを教わるという動画がアップされましたね。

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