日刊サイゾー トップ > 社会  > 売春島「渡鹿野島」は廃墟だらけ

かつての“売春島”は廃墟だらけ……「渡鹿野島」は観光スポットとしてはビミョーでした

新たな観光地として再興しようとしているのはわかるのだけれど、人が集まりそうな名所はない様子

 かつて“売春島”として語られた三重県の渡鹿野島(わたかのじま)。それも、いまや過去の話。こうしたオールドタイプの売春は、時代にそぐわなくなった。加えて伊勢・志摩サミットを契機として島の「浄化」が進み、今では廃墟だらけだという。

 そんな情報は、ネットのあちこちで見つけることができる。でも、実際のところは行ってみなければわからぬ。別件で伊勢に取材に出向くことになった筆者は、これを好機とみて島を目指した。

■交通の便は悪い、一種の秘境

 渡鹿野島の最寄りの駅は、近鉄線の鵜方(うがた)駅。そこから渡し船の乗り場がある島の対岸へと向かう。交通手段はバスかタクシー。

 ひとまず、この島がどんなふうに思われているのか、反応を知ろうと駅に直結した観光案内所へ。窓口で「渡鹿野島へ行きたいんですが」と尋ねると、少し微妙な表情。なんなのだろう。男がひとり渡鹿野島へのアクセスを知りたがるから、その手の客と思われたのか?

 さて、教えられたアクセス方法だが選択は、ほぼタクシーしかない。何しろ、ほかにメジャーな観光スポットがあるわけでもなくバスは2時間に1本程度しかない。自ずとタクシー利用になる。

 場所を告げると、タクシーは無言で走り出す。そして、なかなか到着しない。タクシーのメーターが2,800円になった頃、ようやく渡し船の船着き場へとたどり着いた。

昔は雑誌でも「W島」なんて表記があったわけだが。別に、島にこそこそと隠れた様子があるわけではない
島には外国の言葉を話す女性たちの姿も。おそらくは旅館の従業員だと思うのだけれど……

 待合室には、地元の利用者らしき人の姿も。ただ、その手の客の気配もない。やってきた渡し船で、愛想のよい船頭に船賃を渡すと、船は3分ほどで島へと到着する。

■到着しても、どうしようもない……

 船から一歩下りて筆者が思ったのは「さて、これからどうすればいいのか」ということだった。

 かつて、島が繁栄していた頃の上陸記を読むと、次から次へと遊びへと誘う、遣り手ばばあが近づいてきたという。でも、もはやそんなものはない。

 ひとまず眺めたのは、古ぼけた島の案内図。

 現在は、海水浴場を整備したり、島の形がハート形に近いことから「ハートアイランド」と名付けて家族連れの観光客を呼び込もうとしたりしているとも聞く。けれども、そうした観光客で賑わっている様子もない。島でもっとも多いのが、売春が盛んだった頃には栄えていたと思われる廃墟なのだ。

 かつてはカメラを出すだけで怒られたというが……。

このあたりには、いまだ人が暮らしている雰囲気も。特に写真を撮っていても注意されることはなかったが…
ここもかつては、女性を買いにやってきた客で賑わった時代があったのだろうか
まだ海開き前の海水浴場の向かいには巨大な廃墟が。島には廃墟になった建物が多めである

 実のところ、この島で、売春が完全に途絶えたかといえば、そんなことはなさそうだ。それというのも、島の観光案内のサイトを見ると、各旅館へのリンクがつながっている。それらのホームページでは、ピンクコンパニオンを呼んでの宴会がちゃんと案内されているのである。つまり、かつての売春島のような風景はなくなっても、温泉地では定番系のピンク産業は、今なお栄えている様子である。

宿によっては専用の船を持っていて対岸まで迎えに来てくれるサービスもあるらしい

 いまだに、さまざまなメディアを通じて広まった情報により「渡鹿野島=売春島」というイメージは根強い。でも、それを期待して出かけてみると、30分もかからずに一周できる廃墟だらけの島があるのみなのだ。

いったいどういうセンスでこういうオブジェになったのだろうか。聞いてみようとしても、人の姿はない
集落の奥のほうにある謎のオブジェは、どれも著作権無視の中国の遊園地的な雰囲気がある

 何より、世間から隔絶された島のイメージもどこにもない。というのも渡し船は頻繁に行き来して、常に客を運んでいる。島民は、島の対岸に車を停めておいて、そこから買い物に出かけるのが日常の様子。帰りはバスに乗ろうと思い、2時間あまりバス停に座っていたのだが、その間にもひっきりなしに、人が出たり入ったりしていた。かつての売春産業は姿を消したが、生活は常に継続しているようだ。

 わずかな廃墟を眺めるためだけに時間を費やす渡鹿野島。あえて出かける価値があるかといえば……判断は、読者にお任せする。
(文=昼間たかし)

最終更新:2018/07/21 21:00
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