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どこのサイトも書けない! フィリピン語学留学の落とし穴

■フィリピン留学を快適にするために避けたい“アレ”とは

 費用は欧米圏よりははるかに安く、授業も手厚いフィリピン留学だったが、一点後悔しているのは「夏休みにかかるタイミングで行かなきゃよかった」ことだ。私は6月末から8月頭までフィリピンにいたが、7月中旬までの夏休みになる前までは快適だったが、夏休みにかかってからはしんどかった。夏休みになると子供が増えるからだ。

 私自身がオール公立校出身で、「海外留学」という発想が本人にも親にもない家庭ですくすく育ったために「小学生ごときが留学?」だったが、これが結構いるのだ。親子留学という形で母親が付き添って留学している子が何人もおり、夏休みに入ると学校の夏休みに合わせ増えてくる。インターナショナルスクールに通っていたり、親の海外転勤に合わせて、というケースも多い。

 確かにフィリピン留学は欧米圏留学よりはずっと安いが、それでも子供を小さいうちに留学させようと思えるほど経済的に余裕がある日本の家庭はかなり少ないだろう。「貧困とは選択肢を持てないこと」といった趣旨の言葉があるが、その重さをしみじみと知る。「小学生の子を語学留学させるなんてそもそも考えてみたこともなかった」という家庭と、それをアッサリやってのける家庭の小学生はスタートラインが違う。それぞれの子どもたちの生涯賃金の差、そしてそれが次の世代にも連鎖して……と思うと、遠い目になる。

 その中には、学校の通信簿で「落ち着きがない」と先生から確実に書かれるであろう騒がしい小学生の御子息に対し、特にそれをたしなめず、「公共心の教育」はあまり考慮されない教育方針なのだな、と推測されるお母上で構成される親子もいた。

「自分と自分の家族はかけがえないが、他人はどうでもいい」という、家族原理主義者はたまに見かける。貧乏人でも家族原理主義者はいるが、金持ちだとひがみからより腹が立つものだ。これを「ブラック金持ち」と呼びたい。しかし、基本的に子連れで来ている家族は親は上品、子はおとなしい「ホワイト金持ち」が多かった。

 しかし、ブラック御子息よりもはるかに悩ましかったのは、高校生の団体客だった。私の通っていた語学学校はいくつかの私立高校と提携しているようで、夏休みのタイミングでひっきりなしに高校生の団体客が入ってくるのだ。泊まったホテルの横の部屋や上の部屋に高校生の修学旅行の団体客がぎっしり入った状態を想像してほしい。「女子高生がいっぱいだ」と前向きな人もいるかもしれないが、たいていの人は「騒がれたらやだなあ」と思うだろう。

 ある高校(へっぽこ高校〈仮名〉と呼びたい)は、外は夜中まで騒がしく、上の階からは反抗期なのか日が変わってもどすんどすんという音が常に響いていた。「男子高校生達が妙齢の女(私)をちっとも寝かせてくれない」という状況が続き、クレームは入れたもののあまり改善されなかった。

 へっぽこ高校が語学学校を去るときは本当に嬉しかったものの、そのあとは別の高校が来ると知ったときは泣いた。しかし、その高校は生徒の徳が高く、なぜか部屋でなく廊下で夜中騒ぐというへっぽこ高校がしたことをしなかったために、心穏やかに過ごすことができた。

 

■ネガティブ情報は伝わりにくい現状のフィリピン留学

 へっぽこ高校の夜中にいつも騒いでいた学生と、引率のわりに引率の責務を果たさなかった教員の、今後の人生がしょっぱめになりますようにとは切に願うが、エネルギーが無駄に有り余っている世代の団体客に静寂を求めるほうが無茶だ。それならば高校生団体客とそれ以外の生徒で宿泊するエリアを分ければいいのにそれをしなかった語学学校側のやり方には不満がある。

 フィリピン留学についてのポータルサイトはいくつもあり、私も学校選びや現地の生活においてこれらのサイトを参考にした。ただ、これらの多くはエージェント(留学希望の生徒に学校を紹介する事業)もしくは特定の学校が運営しているものもあり、「特定の学校に対するネガティブな情報」を知りにくい。Google mapなどで口コミも見られるが、「関係者の絶賛」か「具体的な批評ではなくただの罵詈雑言」が目立ち、どこまで信用できるかは怪しい。フィリピン留学自体がここ10年で急拡大した新しい産業なので、これからの情報サイトやエージェントの洗練、差別化にも期待したい。留学は2泊3日で終わるものではないからだ。

 まずは自衛のため、子どもが騒がしくても全然平気という人は問題ないが、気になる人は基本夏休み等の長期休暇は避けた方が絶対いい。また長期休暇中でなくとも団体の高校生が留学するケースもあるようなので、予約前に学校側にそういった団体客がいないか確認した方がいいだろう。また、子どもの留学がハナからメニューに入っていない、ビジネス、法人色の強い学校を選ぶのもいい。

 また、料金は高くなってしまうが、宿泊先は寮ではなく学校近隣のホテルのプランを提供している学校も多い。静かに過ごしたいなら後者だろう。私は次回はそういったプランを選ぶつもりだ。「次回」を考えるほど、留学自体は楽しかったのだ。

 金はあるところにはあるのだと日本の格差社会に暗くなったフィリピン留学だったが、しかし私とてフィリピンの一般人から見れば日本で暮らせている以上、全然金持ちだ。フィリピンの経済はぱっとしない。国の経済が出稼ぎで賄われていて、自国の経済がなかなか発展しないのだ。フィリピンの世代別の人口構成比は日本がうらやむほど綺麗なピラミッド型の若い国だが、「高い失業率」という厳しい現実がある。人がいても仕事がなく、昼間、町をうろうろしている人がたくさんいた。

 タクシーの運転手は日本に出稼ぎに来たことがあり、フィリピンで働くより4倍稼げるからまた年内に日本に行くのだと日本語で話していた。国内でけなげに働くのがあほらしくなるほどの差だ。

 フィリピン人はちょっと驚くくらい家族を大切にする。語学学校の先生は年頃の女性が多かったが、週末に何をするのと聞けばバスを乗り継ぎ実家に帰って親と兄弟に会うのが楽しみだとうれしそうに話していた。そんな家族思いの人が出稼ぎで違う国で離ればなれに暮らさねばならないのは悲しい。

 またフィリピンへ留学したい。授業料や物価は多少上がったところで欧米に比べればまだまだ驚くほど安いのだ。語学学校も含め自国の経済が発展し、それが一人ひとりの暮らしに還元されていってほしいと願っている。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]

最終更新:2018/08/25 21:00
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