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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.496

姿を見せないスナイパーから標的にされる恐怖!! 北村龍平監督が皮膚感覚で撮った『ダウンレンジ』

ハイウェイを走っていたSUVが何者かによって銃撃される。携帯電話が繋がらず、荒野が恐怖の密室と化していく。

 正体不明の敵から、理由もなく狙われることほど恐ろしいものはない。スティーヴン・スピルバーグ監督のデビュー作『激突!』(71)やルトガー・ハウアーが不気味すぎる『ヒッチャー』(86)は、平凡な主人公が公道で得体の知れない“悪意”に執拗に襲われる恐怖を描いた人気作だ。ハリウッドに拠点に置く北村龍平監督の新作『ダウンレンジ』も、それらのサスペンス作品と同じ系譜にある。何ひとつ身を守るものがない荒野で、主人公たちは高性能ライフルを手にした凄腕のスナイパーから狙い撃ちされることになる。米国で暮らす北村監督自身が味わっている恐怖心を感じさせる内容だ。

 北村監督はインディーズ映画『VERSUS ヴァーサス』(01)が世界各国の映画祭で賞讃され、アクション映画界から期待される若手監督としてブレイクを果たした。坂口拓らが出演した『ヴァーサス』は超低予算映画だったが、「この作品で世に出るんだ」という監督やキャストの異様な熱気がほとばしっていた。『ヴァーサス』の成功によって、北村監督は『あずみ』(03)や『ゴジラFINAL WARS』(04)といった国内メジャー作品へとステップアップし、さらに10代の頃からの夢だったハリウッド進出を果たす。

 北村監督のハリウッドデビュー作『ミッドナイト・ミートトレイン』(08)はブレイク直前のブラッドリー・クーパーを主演に起用した快作として完成したものの、配給会社内の権力闘争に巻き込まれてお蔵入り同然の扱いを受けてしまった。ハリウッドで受けた理不尽な洗礼に屈することなく、北村監督はその後もルーク・エヴァンズ主演作『ノー・ワン・リヴズ』(12)や小栗旬主演作『ルパン三世』(14)と精力的に撮り続けている。

姿を見せずに人間狩りを楽しむスナイパーに、怒りに燃える男性が丸腰で立ち向かっていくが……。

 ワールドプレミアとなったトロント国際映画祭ミッドナイト部門で、熱狂的な喝采を浴びた『ダウンレンジ』。企画からクランクインまで長い長い時間を要するハリウッドスタイルや諸方面への配慮を求められる原作ものと違って、限られた予算と撮影日数ながら、監督自身が撮りたいと思ったものを一気に撮り上げたインディーズスタイルに回帰した作品だ。

 タイトルとなっているダウンレンジとは、銃弾の射程圏内のこと。つまり戦闘地帯のことを指している。独立戦争、南北戦争、西部開拓期を経て、今なお銃社会が続く米国では、いつどこが戦闘地域になるか分からない。世界最大の先進国ながら、キャンパス内で銃乱射事件が多発するなど、米国人は見えない恐怖と隣り合わせで暮らしている。ハリウッドに渡って10年を迎える北村監督も、よく利用するシネコン内で射殺事件が起きるという恐怖とニアミスしたそうだ。

 上映時間90分の本作のストーリーは極めてシンプル。姿を見せないスナイパーの餌食となるのは、SUVに乗り合わせた6人の大学生たち。楽しげな会話が弾むSUVのタイヤがパンクし、だだっ広い荒野で立ち往生となってしまう。あまりにも僻地すぎて、携帯電話の電波も不安定な状況だった。ドライバーがタイヤ交換しようとすると、タイヤがバーストした原因は銃弾だったことが分かる。何者かがSUVを狙って銃撃してきたのだ。

 悪意の存在に気づいたときには、すでにひとり学生の顔は半分に吹き飛ばされていた。残された男女は、車の裏側や木の陰に隠れるが、一歩でも動こうとすると、ハイウェイから離れた樹木に潜むスナイパーが容赦なく、しかも的確に撃ち抜いてくる。まるで狩りを楽しむかのようだった。じりじりと照りつける日差しが、学生たちをより苦しめる。パニック状態に陥りながらも、彼らは生き残るために懸命に智恵を絞る。SUVを携帯電話の電波の届くところに移動させようと試みるが、さらに多くの血を流す事態を招いてしまう。


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