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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

NHKドラマとの相性の良さはバツグン! 『透明なゆりかご』清原果耶が朝ドラヒロインになる日

 そして、そんな生真面目でシリアスなムードと見事に合致しているのが、本作のヒロイン・アオイを演じる清原のたたずまいだ。

 本作におけるアオイの役割は、産婦人科を訪れる女性たちを見つめて、寄り添うことだ。普通の医療ドラマなら、主人公の医師や看護師が問題解決に一役買うことが多いのだが、高校生の看護師見習いのアオイにできることは限られている。

 だから彼女に与えられた役割は、ひたすら患者と現場を見つめることだ。

 その対象を見つめる眼光の鋭さが素晴らしい。髪形はおでこを出したオールバックなのだが、それがアオイの意志の強さを際立たせており、凛とした強さを放っている。

 普通のドラマならメイクや照明で隠してしまう、ほくろやニキビ、あるいは肌荒れといった肌の状態も生々しく映し出され、エピソードもリアルだが、メイクや服装に対するこだわりがそれを際立たせている。

 当初は張り詰めた緊張感を全身から漂わせていたアオイだが、話が進むにつれて、年相応の子どもっぽさを見せ始め、演技にユーモアも生まれてきた。

 同時に、両親が離婚し、注意欠陥多動性障害(ADHD)だったことが理由で、母親とのわだかまりを抱えていた過去も描かれるなど、複雑な人間性がだんだん明らかになってきた。そんなアオイの多面性を清原は的確に演じ、演技に奥行きをもたらしている。

 清原はファッションモデルとしても活躍しているのだが、その時の印象は華のある、かわいい美少女という感じだ。Netflix配信のドラマ『宇宙を駆けるよだか』で演じるヒロインは、モデルの時の印象に近い。

 華やかな服装でファッション雑誌に登場している清原を見た後、アオイを演じる彼女を見ると、女優とはこんなに変わるものなのかと驚く。

 彼女が女優として注目されるきっかけとなったのは、連続テレビ小説『あさが来た』で演じた女中のふゆ。当時はまだ14歳で演技経験もなかったが、年齢を重ねて成長していく姿を演じたことで、女優としての評価が一気に高まった。その後、『精霊の守り人』では綾瀬はるかが演じるヒロイン・バルサの少女時代を演じており、今回の『透明なゆりかご』の成功で、NHKドラマとの相性の良さは証明された。

 そうなると、どうしても期待してしまうのが朝ドラだが、本作の評判を見ていると、「安達奈緒子・脚本×清原果耶主演」の朝ドラを見られる日も、そう遠くないはずだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2018/09/11 14:00
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