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映画『止められるか、俺たちを』公開記念特集第3弾

“革命家”足立正生が語る若松孝二と共闘した時代「若者が感じる閉塞感は今も変わらない」(後編)

若松監督が私財を投じ、2007年に完成させた『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』。反権力の立場から描かれた若松監督ならではの作品だ。

■日本を離れてからも続いた若松監督との交流

──中東でゲリラになった足立さんの所へ、若松監督はカンパを持って毎年のように訪ねてきた。

足立 お金をカンパされたことは一度ありませんよ。あのケチがお金なんて持ってくるわけないじゃない(笑)。それでも毎年暮れになるとぬっと現われ、お餅やアンコやノシイカを大きなカバンいっぱいに詰めてきてくれた。新鮮なカモ鍋を食べながら、ゲリラの基地で日本風の正月を若ちゃんと過ごしたものです。「あっちゃん、俺はもうピンク映画の監督じゃないんだ。メジャーな監督になったんだ」なんてことも、その頃の若ちゃんは自慢げに語っていましたね。それから、僕は妻や子どもを日本に残してきたから、若ちゃんは前の妻から預かった離婚届けをポケットに入れたまま、「サインしてくれ」と言い出せずにそのまま帰国したことが3回くらいあった。そのことは後から知りました。娘を送って寄越したこともあります。娘からは「お父さんなんか、大嫌い。お父さんのせいで、学校の先生も一緒になって私をいじめる」と責められました。「俺を恨め」と言うしかありませんでした。

──日本に戻ってからは、ご家族とは?

足立 いや、向こうで逮捕されたとき、娘が来てくれて丘の上にある刑務所まで毎日炊き出しを運んで持ってきてくれました。第三世界の刑務所は、どこも1日1回パンとスープが出るだけなんです。差し入れがないと命が繋がらない。そんな状況で、ずっと疎遠だった娘と知り合っていったんです。日本に帰ってからは、孫にも会わせてもらっています。本当に好き勝手な道を歩んできました。日本に戻ってからは佐藤忠男ちゃんや荒井晴彦の計らいで、日本映画大学の非常勤講師を6年間務めました。「好き勝手な人生を歩んできたんだから、若い人に教えることで償いなさい」ということでしたが、若い人たちと対等な関係で勉強することは、楽しかったですよ。

──最後に足立さんが考える、若松孝二作品ベスト3を教えてください。

足立 普通に言われているのとあまり変わらないけれど、『壁の中の秘事』(65)、僕の書いた脚本を若ちゃんがどんどん削ってめちゃめちゃにしてしまった『胎児が密猟する時』、それから『性賊 セックスジャック』(70)あたりが僕は好き。当時の「若松プロ」に充満していた熱気みたいなものを感じさせますよ。それこそ、マンションの一室を使って撮影していたわけだけど、1週間も篭っていると監督している若ちゃんもだんだんおかしくなってくる。それが、面白かったよね。

──若松監督の近年の代表作となった『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(07)は、足立さん的にはどう評価されているんでしょうか?

足立 最初は僕が脚本を書いていたんです。でも、製作委員会ができて、僕が考えていたものとは違うものに変わっていった。僕が考えていたのは「勇気がなかった」をキーワードにしようというものでした。山荘に篭って共産化するといっても、それがどんなものかは誰も分からないわけです。その分からない自分を認めることが本当の勇気なんだ、それが革命に必要な勇気なんだということを僕はテーマにしたかった。その部分は最終稿からは消えていたんですが、撮影現場で考え込んでいた若ちゃんは、「あさま山荘」に篭った最年少の加藤少年に勇気とは何かを語らせる台詞を最後の最後に書き加えたんです。僕が当初考えていたものとはちょっと違うものになりましたが、若ちゃんは「お前の言っていたキーワードをちゃんと入れたぞ」と偉そうに言っていましたねぇ(笑)。

(取材・文=長野辰次)

『止められるか、俺たちを』
監督/白石和彌 脚本/井上淳一 音楽/曽我部恵一
出演/門脇麦、井浦新、山本浩司、岡部尚、大西信満、タモト清嵐、毎熊克哉、伊島空、外山将平、藤原季節、上川周作、中澤梓佐、満島真之介、渋川清彦、音尾琢真、高岡蒼佑、高良健吾、寺島しのぶ、奥田瑛二
配給/スコーレ 10月13日よりテアトル新宿ほか全国順次公開中
(c)2018若松プロダクション
http://www.tomeore.com

最終更新:2018/10/17 19:30
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