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老舗「日本橋高島屋」新館は百貨店の未来を変えるか? 百貨店事業の約3分の2を稼ぎ出すショッピングセンター

「日本橋高島屋」は百貨店として初めて重要文化財となった建物。大理石の柱や階段にはアンモナイトの化石があることも有名で、見学ツアーも行われている。

 店内に一歩足を踏み入れると、シャンデリアが吊り下げられ、大理石の柱が並ぶ豪壮な吹き抜け、案内係が手動で操作するエレベーターなど、昭和初期にタイムスリップした感覚になる。

 昭和8年(1933年)に開店した老舗百貨店にふさわしい重厚な造りだが、9月25日オープンした隣り合わせの新館は、建物こそ本館を模した造りだが、館内はまったく異なるモダンな空間。年配客が多い本館とは対照的に、若い女性の姿も目立ち、連日多くのお客で賑わっている。

本業の約3分の2を稼ぎ出すショッピングセンター
 実は百貨店ではなく、114店舗(本館ガレリア1階を含む)が出店している専門店ゾーン。新館のオープンで、今春、開業した東館と「ウォッチメゾン」と合わせ4館となり、「日本橋高島屋S.C.」というショッピングセンター(SC)となった。

 新館の開発に携わったのは東神開発というグループ会社。日本初の郊外型SCの「玉川高島屋S・C(東京・世田谷)」を手がけ、シンガポールでも同国有数のSCを運営しており、その手腕は業界からも高く評価されている。

 利益では本業の百貨店事業の約3分の2に当たる額を稼ぎ出し、高島屋の屋台骨の1つとなっている。高島屋は百貨店業界にあって有力デベロッパーの顔も持つ異色の存在、三越と伊勢丹、大丸と松坂屋と大手同士が合併するなかで、数少ない独立独歩を保てるのも東神開発のおかげだ。

 その東神開発が手がけただけあって、日本初上陸や商業施設初出店、新業態といった目新しい店舗をはじめ、魅力的な専門店で構成され、館内もゆったり買物が楽しめるよう設計されている。

 ターゲットは本館の既存顧客も対象にするが、いままで十分に取り込めなかった層にフォーカスし、近隣のオフィスワーカーや国内外のツーリスト、特に20代、30代、40代の女性に狙いを絞っている。

本館と差別化を図る店舗の数々
 「紀伊國屋アントレ」や、「ディーン&デルーカ カフェ」、人気ベーカリー「365日と日本橋 」などがある1階プロムナードは、出勤前の利用も見込み、平日は朝7時30分から営業するなど、営業時間の見直しもした。

 地下1階は食品ゾーンだが、雑貨も取り扱う食のライフスタイルショップ「アコメヤ トウキョウ」、「東京カレースタンドHATONOMORI」、「寝かせ玄米と日本のいいものいろは」など特色のあるショップをラインナップ、15店舗中12店舗でイートインを楽しめる。高質スーパーの「成城石井」も出店し、それぞれの食料品売場が並ぶ「デパ地下」ではなく、専門店が集まるSCのフードゾーンだ。

 2階と3階のファッション・雑貨ゾーンも、「グッチ」に代表されるスーパーブランドや「レリアン」、「ジュンアシダ」といった百貨店ショップのある本館とは一線を画し、「トゥモローランド」をはじめとするメンズ・レディースの複合ショップを導入、若年層向けのテナント構成となっている。

 4階は、女性専用の「リベリー ヨガ コンディショニングbyティップネス」、茶道教室・茶道具専門店「茶論 中川政七商店」といった、いわゆる「コト消費」に対応した店舗が出店している。

 5階では、本棚ごとにテーマを括って本を売る書店「ハミングバード・ブックシェルフ」、最新雑貨グッズのセレクトショップ「ブリック&モルタル」など、個性的な店舗を集め、英国調のスタイリッシュな理容室「ザ・バーバー」も設けた。

 6階と7階はレストランゾーン、「総本家 更科堀井」などの老舗から、地元人形町のグルメバーガーショップ「ブラザーズ」といったカジュアルフードまで揃え、新しい食も提案する。

 そして、来春には、ガーデンの「日本橋グリーンテラス(仮称)」もオープンし、都心にあってくつろぎのスペースも提供する。

違う道を歩む三越と高島屋。どちらに軍配が上がるか
 日本橋は、かつては「三越」と「高島屋」の両雄が並び立つ百貨店の街だったが、近年、再開発が進み、三井不動産の商業施設「コレド日本橋」や「コレド室町」も登場、今回の新館開業も加わり、街の表情も変貌した。来街者やオフィスワーカーにとっては、新たな魅力として映っており、来街者も若返りを見せている。

 高島屋のSC化という新たな展開に対して、迎え撃つ「三越日本橋本店」は、今春から改装を進めて、10月24日、第1期のグランドオープンを迎えた。

 「日本一のおもてなし」をめざし、専門知識に詳しく経験豊富な総勢90名の「コンシェルジュ」を、各フロアに「パーソナルショッピングデスク」を設けて常駐させ、客の要望や相談に応じる体制を整える。また、ガイドが案内する本館1階の「レセプション」も新たに設け、110名のガイドが店内も巡回し対応する。

 顧客はコンシェルジュを来店前に予約することも可能で、コンシェルジュは携行する端末を通じて、購買履歴など顧客の情報を共有し、より詳しいコンシェルジュに引き継ぎも行う。こうして顧客一人ひとりに向き合い手厚い接客サービスを行うことで、20年度には50億円の売上増を見込んでいる。

 三越はあくまでも接客という百貨店ならではのサービスを強化し、百貨店として生き残りを図る。高島屋はSC機能を高めて、百貨店はそのなかの一つと位置付け、今後の展開いかんでは、将来的に本館は百貨店ではなくなる可能性もあり、対照的な取り組みだ。

岐路に立つ百貨店事業
 昭和の良き時代は庶民にとって、百貨店は休日に家族揃って出かけ、ささやかなショッピングを楽しみ、屋上の遊園地で遊び、食堂でごちそうを食べる行楽スポットだった。

 そして1980年後半からのバブル期は、スーパーブランドや高額商品の売れ行きが絶好調で、91年には9兆円に達した。しかし、バブル崩壊後は売上が減り続け、現在は約6兆円と3分の2まで縮小している。

 近年は、中国を中心としたアジアからのインバウンド客で活況を見せたが、それも一段落、市場が上向くまでには至っていない。若い世代を中心に百貨店の客離れは依然として続いており、顧客の高齢化も進んでいる。

 「アマゾン」、「楽天」、「ゾゾタウン」などEコマースの攻勢が激しさを増すなかで、利便性で優位に立つネットに対抗し、生活者にとって魅力的な施設として、百貨店が再び見直される日は来るのだろうか。

 百貨店の次世代イノベーションとも言える、日本橋での新たな取り組みの成否が注目される。あなたは百貨店に行きますか、それとも?

最終更新:2018/10/29 07:15
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